The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

一般演題(口演・誌上開催)

PDFポスター

口腔機能

[O一般-013] 口腔機能低下症の診断基準の再考

○室谷 有紀1、八田 昂大1、三原 佑介1、村上 和弘1、福武 元良1、佐藤 仁美1、萩野 弘将1、高橋 利士1、松田 謙一1、池邉 一典1 (1. 大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座 有床義歯補綴学・高齢者歯科学分野)

【目的】

平成30年度の歯科診療報酬改定で「口腔機能低下症」が保険収載され、注目度が高まっている。口腔不潔、口腔乾燥、咬合力低下、舌口唇運動機能低下、低舌圧、咀嚼機能低下、嚥下機能低下の7つの検査項目を比較すると、低下群の割合に著しい差があり、それぞれのカットオフ値が同じ程度の重症度を示すのかは、疑問が残る。そこで、本研究では、地域在住の後期高齢者を対象に現在の口腔機能低下症の現状を調査し、診断基準を再検討することを目的とした。また、カットオフ値を変えた場合に、口腔機能低下症の割合がどのように変化するか推算した。

【方法】

本研究の対象者は、2019年にSONIC研究に参加した78-80歳の自立した地域在住高齢者537名(男性265名、女性272名)とした。口腔機能低下症の診断項目として、口腔乾燥(口腔水分計)、口腔衛生状態(Tongue Coating Index:TCI)、咬合力、舌口唇運動機能、舌圧(JMS舌圧測定器)、咀嚼機能(スコア法)、嚥下機能(EAT-10)をそれぞれ計測した。最初に、現在の口腔機能低下症の罹患率ならびに各診断項目の低下群の割合を算出した。次に、それぞれの診断項目の下位20%、25%、33%をカットオフ値とした場合の口腔機能低下症の罹患率を算出し、比較した。

【結果と考察】

現在の診断基準に基づいて口腔機能低下症を診断した場合には、口腔機能低下症の罹患率は54.4%(292名)であった。また、各診断項目の低下群の割合は、舌口唇運動機能と舌圧が70.9%、64.6%と高く、嚥下機能は4.5%と低く、その他TCI、口腔乾燥、咬合力、咀嚼機能は、それぞれ37.8%、34.6%、34.3%、24.6%であった。次に、各診断項目の下位20%、25%、33%を低下とした場合には、口腔機能低下症の割合は、それぞれ20.1%、33.6%、52.3%であった。今回の結果より、現在の基準では、各診断項目で低下の割合に大きな差があることが明らかとなった。また、現在の口腔機能低下症の罹患率とは、各診断項目のカットオフ値を下位33%とした場合が最も近い罹患率となった。今後、診断基準についてさらなるエビデンスを蓄積し、更新する必要性が示唆された。

(COI開示:なし)

(大阪大学大学院歯学研究科・歯学部及び歯学部附属病院倫理審査委員会承認番号H27-E4)