The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演・誌上開催)

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口腔機能

[O一般-014] 脳卒中急性期の嚥下障害スクリーニングから見落とされる症例の特徴

○竹田 智帆1、平岡 綾1、森 隆浩1、前原 朝子2、西村 瑠美2、吉川 峰加1、吉田 光由1、津賀 一弘1 (1. 広島大学大学院 医系科学研究科 先端歯科補綴学研究室、2. 広島大学大学院 医系科学研究科 口腔健康科学領域)

【目的】
 脳卒中急性期の嚥下障害は転帰不良に大きく寄与しており,経口摂取の開始には適切な評価が必要である。本研究では,嚥下スクリーニング検査で見落とされやすい症例の特徴をVF検査より明らかにすることとした。
【方法】
 対象者は,医療法人翠清会梶川病院に2016年8月から2018年6月までに脳卒中により入院した患者539名のうち,覚醒し,全身状態が安定しており,病前に認知症を認めなかった者の中から前向きに選択した。スクリーニング検査である改訂水飲みテスト(MWST)および反復唾液飲みテスト(RSST)により問題なしと判断された172名を対象に,脳卒中発症後14日以内に嚥下造影検査を実施した。嚥下造影検査では,誤嚥の有無,1回嚥下後の明らかな口腔内残留,喉頭蓋谷残留,梨状陥凹残留,嚥下反射惹起遅延等を定性的に評価し,ノンパラメトリックの変数を解析する統計学的手法を用いた。
【結果と考察】
 VF検査により誤嚥が認められた者は172名中16名(9.3%)であった。誤嚥をしていた者で嚥下反射惹起遅延のある者が有意に多かった。また,嚥下反射惹起遅延のある者では,臼歯部の咬合喪失や口腔内残留を多く認め,最大舌圧が低く,National Institutes of Health Stroke Scaleが高い傾向を認めた(p<0.05)。多変量解析の結果,臼歯部の咬合の有無と1回嚥下後の口腔内残留の有無が関係する因子であった。
 以上の結果より,嚥下反射惹起遅延のある者がスクリーニング検査で見落とされる可能性が考えられた。また,MWSTとRSSTを組み合わせた嚥下スクリーニング検査により経口摂取可能と判断された者のうち,VF検査で誤嚥を認めたものは1割程度であったことから,MWSTとRSSTを組み合わせた嚥下スクリーニング検査は非常に有効であることが示された。
【謝辞】
 本研究に多大なる協力をいただいた医療法人翠清会梶川病院の方々,および嚥下造影検査解析にご協力いただいた広島大学名誉教授谷本啓二先生に深謝いたします。本研究は平成29年度日本歯科医学会プロジェクト研究費の支援を得て実施した。
(COI開示:なし)
(広島大学大学院医歯薬保健学研究科倫理委員会承認番号 E-1151)