The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演・誌上開催)

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口腔機能

[O一般-016] 内科通院中の高齢者における口腔内の状況および生活習慣と脳萎縮との関連

○江頭 留依1、梅崎 陽二朗1、山口 真広1、玉井 恵子1、水谷 慎介3,4、藤田 拓1、牧野 路子2、内藤 徹1 (1. 福岡歯科大学総合歯科学講座高齢者歯科学分野、2. 福岡歯科大学総合歯科学講座訪問歯科センター、3. 九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座高齢者歯科学・全身管理歯科学分野九州大学大学院歯院附属OBT研究センター、4. 九州大学大学院歯院附属OBT研究センター)

【目的】
 65歳以上の高齢者のうち認知症を発症している者は2012年の時点では462万人にものぼる。2025年には730万人を超えると言われており,認知症の予防は本邦の急務の課題である。認知症患者の増加に伴い,歯科領域においても種々の対応が求められている。認知症の進行と共に,大脳の萎縮が進行することは多くの研究で示されている。歯周病や義歯の不使用,現在歯数の低下などが認知症と関連する可能性は報告されているが,いまだ口腔内の状態と中枢の変化との関連性は明らかになっていない。本研究では、口腔内状況および生活習慣と脳の萎縮度との関連を明らかにすることを目的とした。

【方法】
 近医内科通院中の高齢患者で2018年8月から12月の間に同院へ来院し,本研究に同意の得られた15名を対象とした。口腔指標と生活習慣に関する情報を取得した。口腔指標として現在歯数,咬合支持数,歯周状態等を,生活習慣として,飲酒の有無,定期的な運動の有無,喫煙習慣の有無等を調査した。脳画像検査や認知機能検査の所見は,同院の診療録から抽出した。認知機能検査はMMSE(Mini-Mental State Examination)またはHDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)を用い、VSRAD (Voxel-based Specific Regional analysis system for Alzheimer’s Disease)で全脳の萎縮度を測定した。全脳の萎縮度にかかわる因子の探索にはMann-whitneyのU検定を用いた。各因子間の相関については,ピアソンの積率相関、スピアマンの順位相関を用いた。

【結果と考察】
 被験者は男性4名,女性11名で,年齢は平均75.9歳,現在歯数は平均15.0本であった。全脳萎縮にかかわる因子の検定ではアイヒナー分類(AB/C:p =0.026),現在歯数(≧15/14≧:p=0.05),運動習慣の有無(p=0.05)のそれぞれにおいて有意な差を認めた。また,全脳委縮度と喪失歯数の間には正の相関も認められた(r=-0.54、p=0.03)。これらのことから現在歯数が認知症の進行を反映する指標となる可能性が示唆された。

COI開示:なし  
福岡歯科大学倫理審査許可番号 第379号