The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演・誌上開催)

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口腔機能

[O一般-020] 全部床義歯装着者の義歯への満足度と咀嚼能力,食品摂取状況,口腔関連QOLとの関連性

○菊地 さつき1、Salazar Simonne1、善本 佑1、米田 博行1、長谷川 陽子1、堀 一浩1、小野 高裕1 (1. 新潟大学大学院医歯学総合研究科)

【目的】
 従来,義歯治療の成否は患者の満足度によって判断されてきたが,実際に義歯装着によって機能的な回復が成されたか否かは客観的な機能評価や信頼性のあるアンケートによる確認が不可欠である。しかし,患者満足度を高める要因については明らかではない。本研究は,全部床義歯装着者における,義歯満足度と咀嚼能力,食品摂取状況,口腔関連QOLについて調査し,義歯満足度と他の項目との関連性における装着部位による違いについて検討した。
【方法】
 対象者は,2016年10月から2019年12月までの間に新潟大学医歯学総合病院に通院した全部床義歯(CD)装着患者129名(男性56名,女性73名,平均年齢73.7±8.6歳)とした。
 義歯満足度は,「現在の入れ歯の噛み心地はいかがですか」と言う質問に対するVisual analog scaleの回答から得た。咀嚼能力は咀嚼能力測定用グミゼリー(ユーハ味覚糖)を用いた咀嚼能率スコア(MP)を,主観的評価法として食品摂取状況スコア(FAS)および口腔関連QOL(OHIP-14スコア)を,それぞれ評価した。義歯満足度と各評価項目との相関性について,Spearmanの順位相関係数を用いて検討を行った。さらに対象者を義歯装着部位により,上顎CD群(65名),下顎CD群(9名),上下顎CD群(55名)の3群に分けて検討を行った。
【結果と考察】
 全対象者と上顎CD群においては,義歯満足度とMP/FAS/OHIP-14のいずれとの間にも有意な相関を認め,義歯満足度が高い場合は咀嚼能力,食品摂取状況,口腔関連QOLも高くなる傾向が示された。一方,上下顎CD装着者においては,義歯満足度とFAS/OHIP-14との間に有意な相関を認めたものの,MPとの間には有意な相関を認めなかった。さらに,下顎CD装着者においては,義歯満足度といずれの評価項目との間にも有意な相関を認めなかった。
 今回の結果は,あくまで装着部位による項目間の関連性の違いを示したに過ぎず,個々の調査項目については症例によって多様な因子が影響していることは言うまでもない。しかしながら,今回明らかになった装着部位による傾向の違いは,さまざまな評価の結果を介した歯科医師と患者とのコミュニケーションを円滑に行う上で有意義な情報であると考えられる。
(新潟大学 倫理審査委員会承認番号2015‐3038)