[O一般-026] 地域歯科診療所外来患者における口腔機能の実態調査
【目的】
口腔機能低下症の予防・対策では歯科医の対応が重要であるが,地域歯科診療所における外来患者の口腔機能低下症の罹患率や,口腔機能低下への対応に関する情報は少なく,また,インプラント等の欠損補綴が口腔機能に及ぼす影響を調査した報告も少ない.本研究では,地域歯科診療所における外来患者の口腔機能の現状について調査するとともに,欠損補綴の違いが口腔機能に及ぼす影響について検討した.
【方法】
平成31年3月から令和元年12月までの9カ月間に,定期検診で地域歯科診療所を受診した50歳以上の外来患者で同意の得られた患者を対象とした.年齢,性別,歯式等の基本情報に加えて,口腔機能低下症の検査項目である咬合力,舌圧,咀嚼機能,嚥下機能について計測を行った.得られたデータから口腔機能低下症患者の割合,年齢分布や性差による有症率等を算出するとともに外来患者の口腔機能の実態を評価した.さらに,欠損補綴の違いが口腔機能に及ぼす影響について比較検討を行った.
【結果と考察】
今回調査を実施した対象患者の総数は96名(男性24名,女性72名,平均年齢72.5歳)で,そのうち70歳以上の患者が63名(65.6%)で,50代60代は少なかった.今回の調査では,口腔機能低下症の診断に必要な7つの検査のうち4つの検査で評価を行ったが、その4つの検査項目のうち3つ以上診断基準を満たさずに口腔機能低下症と診断された患者は7名(7.3%)で,2つ以上該当した口腔機能低下症予備軍の患者は18名(18.8%)であった.口腔機能は加齢とともに低下傾向を示したが,性差はみられなかった.欠損補綴の種類別で比較すると,咬合力および舌圧では差はみられなかったが,咀嚼能力ではインプラント治療歴のある患者が可撤性義歯を使用している患者より高い値を示していた.欠損が少なく補綴処置を行ったことのない患者では80代でも口腔機能は良好に維持されていた.
80代の多くの患者が口腔機能低下症および予備軍であったが,口腔機能の低下は50代60代からみられるため,早い段階での対応が口腔機能低下症の予防では重要である.インプラントを用いた欠損補綴は咀嚼能力の維持に有効であり,口腔機能の維持に寄与する可能性が示唆された.
(COI開示:なし)
(福岡歯科大学 倫理審査委員会承認番号 第442号)
口腔機能低下症の予防・対策では歯科医の対応が重要であるが,地域歯科診療所における外来患者の口腔機能低下症の罹患率や,口腔機能低下への対応に関する情報は少なく,また,インプラント等の欠損補綴が口腔機能に及ぼす影響を調査した報告も少ない.本研究では,地域歯科診療所における外来患者の口腔機能の現状について調査するとともに,欠損補綴の違いが口腔機能に及ぼす影響について検討した.
【方法】
平成31年3月から令和元年12月までの9カ月間に,定期検診で地域歯科診療所を受診した50歳以上の外来患者で同意の得られた患者を対象とした.年齢,性別,歯式等の基本情報に加えて,口腔機能低下症の検査項目である咬合力,舌圧,咀嚼機能,嚥下機能について計測を行った.得られたデータから口腔機能低下症患者の割合,年齢分布や性差による有症率等を算出するとともに外来患者の口腔機能の実態を評価した.さらに,欠損補綴の違いが口腔機能に及ぼす影響について比較検討を行った.
【結果と考察】
今回調査を実施した対象患者の総数は96名(男性24名,女性72名,平均年齢72.5歳)で,そのうち70歳以上の患者が63名(65.6%)で,50代60代は少なかった.今回の調査では,口腔機能低下症の診断に必要な7つの検査のうち4つの検査で評価を行ったが、その4つの検査項目のうち3つ以上診断基準を満たさずに口腔機能低下症と診断された患者は7名(7.3%)で,2つ以上該当した口腔機能低下症予備軍の患者は18名(18.8%)であった.口腔機能は加齢とともに低下傾向を示したが,性差はみられなかった.欠損補綴の種類別で比較すると,咬合力および舌圧では差はみられなかったが,咀嚼能力ではインプラント治療歴のある患者が可撤性義歯を使用している患者より高い値を示していた.欠損が少なく補綴処置を行ったことのない患者では80代でも口腔機能は良好に維持されていた.
80代の多くの患者が口腔機能低下症および予備軍であったが,口腔機能の低下は50代60代からみられるため,早い段階での対応が口腔機能低下症の予防では重要である.インプラントを用いた欠損補綴は咀嚼能力の維持に有効であり,口腔機能の維持に寄与する可能性が示唆された.
(COI開示:なし)
(福岡歯科大学 倫理審査委員会承認番号 第442号)