The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演・誌上開催)

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実態調査

[O一般-028] 長崎大学病院における口腔機能低下症の検査と診断

○山口 恵梨香1,2、黒木 唯文1,2、村田 比呂司2 (1. 長崎大学病院口腔管理センター、2. 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科歯科補綴学分野)

【目的】
高齢者における口腔機能が低下していく状態を評価,診断するために,2016年に口腔機能低下症が老年歯科医学会により提唱された。2018年4月の診療報酬改定で口腔機能低下症が正式な病名として認められ,検査料が算定可能となった。しかし,まだ口腔機能低下症の検査と管理は,広く実施されている状況にあるとはいえず,検査による診断や管理方法にも検討が必要であると考えられている。今回,長崎大学病院における検査と診断の状況をまとめたので報告する。
【方法】
対象者は2018年10月から2019年12月の間に,長崎大学病院の歯科を受診し,口腔機能精密検査を行った患者30名(男性11名,女性19名,平均年齢77.4歳±11.0歳)とした。
口腔機能低下症の診断項目である7項目,すなわち口腔不潔,口腔乾燥,咬合力,舌口唇運動機能,舌圧,咀嚼機能,嚥下機能について検査を行った。また7項目のうち3項目以上に低下を認めた場合に口腔機能低下症と診断し,各検査項目における低下群の割合,口腔機能低下症と診断された者の割合を算出した。さらに,診断基準値と今回得られた各平均値の比較を行った。
【結果と考察】
口腔機能低下症の各検査項目における低下群の割合は,口腔不潔78.3%,口腔乾燥69.2%,咬合力83.3%,舌口唇運動機能88.2%, 舌圧58.2%,咀嚼機能53.8%,嚥下機能36.8%となり,項目によって低下群の割合は大きく異なった。また,口腔機能低下症と診断に至った患者の割合は80.0%であった。口腔乾燥,咬合力,舌口唇運動機能,舌圧の平均値は診断基準値を下回っていた。
各検査項目における低下群の割合は,口腔不潔や口腔乾燥といった口腔内環境を評価した項目,個々の機能評価の項目で高かった。一方,咀嚼機能などの総合的な機能の低下は低かった。これは,個々の機能が低下しても,代償作用により他の機能に補われることで,総合的な機能低下へ至らなかったことが考えられ,早期に口腔機能の維持・向上を図ることで機能障害を防止できることが示唆された。また検査結果により口腔機能低下症と診断された割合は高く,さらに5項目で平均値が診断基準値を下回っていたことから,検査対象者の選定目安,検査基準値,検査習熟度については今後も検討が必要であると考えられる。
(COI開示:なし)
(長崎大学 倫理承認番号:20012005 )