The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演・誌上開催)

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加齢変化・基礎研究

[O一般-032] 脳の虚血状態に伴うIba-1の動態

○深澤 麻衣1、及川 大智1、高橋 佑和1、織茂 由香里1、塩田 洋平1、西尾 健介1、伊藤 智加1、飯沼 利光1 (1. 日本大学歯学部 歯科補綴学第Ⅰ講座)

【目的】
 脳血管疾患は,現在日本における死因の第3位であり,死に至らずともその重篤な後遺症は要介護に繋がり,健康寿命を短くする大きな要因となっている。今後も我が国では全人口に対し,高齢者の占める割合が増加していくことが危惧される中,加齢に伴い罹患リスクが高まる脳血管疾患についての詳細な検討は全身のみならず口腔の健康状態を維持する上で重要と考える。
 一方,これまでの研究から脳虚血によって脾臓の重量が減少することが報告されているが,この事象については未だ不明な点が多い。我々は脳虚血における脾臓での変化について検討を行っており,今回脳の血流が障害され再度血流が回復する際に見られる,脳虚血再灌流障害(以下IRI)を想定し,脳ミクログリア細胞のマーカーとしても知られるIba-1分子に着目し種々の実験を行った。
【方法】
 C57BL/6マウスを麻酔下にて開胸し,総頚動脈を手術用クリップにて60分間結紮した。その後,これを解除し創部を縫合したものをIRIモデルマウスとした。IRIによる影響を解析するためIRI後,経日的に脾臓を摘出し,Iba-1陽性細胞数とその分布の変化について免疫組織学的解析を行った。さらに,ミクログリアの活性抑制剤として知られるミノサイクリンの術前術後の投与が及ぼす影響についても比較検討を行った。
 また,脳内でのIba-1 mRNAの発現変化についてはreal-time PCRを用いて,採取した血清のIba-1タンパク量の推移についてはELISAにて解析を行った。
【結果と考察】
 脾臓における濾胞,赤脾髄,特に血管周囲領域において,IRI後5日目をピークにIba-1陽性細胞の増加を認めた。一方で,ミノサイクリンの投与により増加はコントロールレベルまで低下した。この結果を脳ミクログリアにおいてIba-1産生が亢進したことによる変化と考え,脳におけるIba-1 mRNA発現を検討した結果,IRI後3日目からその発現は亢進していた。
 また,IRIにおける血清中Iba-1濃度の変化を検討した。Iba-1は多くの疾患で末梢血中の濃度が上昇することが報告されており,結果はIRIでも同様に3日目以降に,その濃度が上昇することが明らかとなった。
 以上のことから,IRIでは脳ミクログリアにおけるIba-1産生が亢進し,末梢血中に流出する可能性が示唆された。