The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演・誌上開催)

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加齢変化・基礎研究

[O一般-036] 頚椎疾患患者の術後嚥下機能の運動学的解析 -年代と術式による比較-

○吉澤 彰1、中川 量晴1、吉見 佳那子1、山口 浩平1、原 豪志1、中根 綾子1、吉田 早織1、長谷川 翔平1、石井 美紀1、奥村 拓真1、玉井 斗萌1、長澤 祐季1、並木 千鶴1、河合 陽介1、大野 愛莉1、小谷 朋子1、中冨 葉奈1、堀内 玲1、國澤 輝子1、戸原 玄1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野)

【目的】
 頚椎疾患に対する除圧固定術後の合併症である嚥下障害や低栄養は比較的高頻度で起こりうる。当院では,2019年4月より頚椎疾患術後の嚥下障害や低栄養への臨床対応を充実させる目的で,整形外科と摂食嚥下リハ科の合同プロジェクトを開始した。今回,頚椎疾患に対する手術前後での嚥下機能を運動学的に解析し,術後の嚥下機能が加齢や手術方法の影響を受けるか検討した。
【方法】
 当院整形外科で手術が予定された頚椎疾患患者を対象とした。手術前日と術1週後に嚥下造影検査(VF)を実施し,濃いとろみ水4ccを嚥下したときのVF画像からDysphasia Severity Scale(DSS: 1-7),前後と上下方向の舌骨運動距離(mm)および手術前に対する術後の舌骨運動率(%),食塊の咽頭通過時間(s),Bolus Residue Scale (BRS: 1-6),嚥下回数を計測した。計測には画像計測ソフトDIPP-Motion(DITECT)を用いた。対象者を60歳未満(young: Y群),60歳以上70歳未満(young-old: YO群),70歳以上(old: O群)の3群に,また術式により2群(前方および後方アプローチ)に分け,計測項目が年代,術式で相異があるか一元配置分散分析を用いて検討した。さらに手術前後で相違があるか,Wilcoxonの符号付き順位検定とカイ2乗検定を用いて検討した。
【結果と考察】
 対象者は,50名(男37名,女13名,年齢中央値:65歳,26-85歳)であった。術後における前後方向の舌骨運動率はO群で低値を示した一方で,咽頭通過時間は年代に関わらず前方アプローチで有意に延長した。術前後の比較では,前後方向への舌骨運動距離はO群のみで運動距離の制限を認めた。また咽頭通過時間はいずれの年齢群も不変で,BRSと嚥下回数はY群と比較してO群で有意に増加した。以上の結果より,頚椎疾患手術後において,舌骨の前後方向への移動距離および咽頭残留量と嚥下回数が加齢の影響を受けやすいことが明らかになった。頚椎疾患手術後は,特に前方からのアプローチでは咽頭領域の浮腫,反回神経への圧迫刺激などが避けられない。今後,術後嚥下障害の予測因子を解析し,術後合併症の重症化を予防する方策を検討していく。
(COI 開示:なし)
(東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会承認 D2019-004)