The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演・誌上開催)

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全身管理・全身疾患

[O一般-040] 在宅での薬剤の形態調整、服薬指導によりQOLの改善をみたパーキンソン症例

○鎌田 春江1,3、谷口 裕重1、大島 亜希子2、玄 景華1 (1. 朝日大学歯学部口腔病態医療学講座 障害者歯科学分野、2. 朝日大学医科歯科医療センター 歯科衛生部、3. 中町歯科)

【目的】

パーキンソン病(PD)においてはレボドバ補充療法が有効であるが、疾患の進行や加齢の影響により嚥下機能が低下し、内服が困難となるため必要な薬効を得られないことも多い。今回、薬効が不安定であった嚥下障害を有するPD患者に、在宅での薬剤の形態調整・服薬指導を行うことにより薬効が安定し、QOLの改善をみた症例を経験したので報告する。

【症例の概要と処置】

71歳男性、糖尿病、大腸癌ope既往あり、7年前にPDと診断され3年前より急速に症状が進行した。嚥下困難感、むせ、体重減少、薬を飲んでも効かないNo-on現象や効くまでに時間がかかるdelayed-on現象、夜間の足の痛み・痰による不眠を訴えていた。初診時体重は50.0㎏、BMIは17.7であり、MNA-SFは9点で低栄養のリスクが示された。嚥下造影検査(VF)では咽頭収縮力の低下による咽頭残留、薄とろみ水や粥の誤嚥、咳嗽反射の低下をみとめた。中等度から重度嚥下障害と診断し、飲料の中間のトロミ付与を勧めた。在宅にてケアマネネージャー、訪問看護師立会いのもと嚥下内視鏡検査(VE)を行い内服の様子を観察すると、錠剤は喉頭蓋谷や梨状窩に残留し、トロミ水で繰り返し嚥下しても残留はクリアにならず、日常的な薬剤の咽頭残留が疑われた。その場でOD錠と錠剤の簡易懸濁を試行し、簡易懸濁時の薬剤の残留が少ないことを確認し、主治医に情報提供を行った。主治医より散剤への処方変更が行われ、散剤を服薬ゼリーに混和し服薬する方法を指導した。

【結果と考察】

服薬が安定したことでNo-on現象やdelayed-on現象が減り、特に朝初回の服薬時に毎回あったdelayed-on現象は消失した。夜間の足の痛みによる不眠は毎日から週3日ほどに減り、睡眠がとれるようになったことで、本人だけでなく妻の介護負担も軽減した。体重は1年で8㎏増加(服薬指導後2か月で4㎏増)、BMIは20.8、MNA-SF11点となり、栄養状態も改善した。

本症例では在宅にて実際に服薬する現場をVEで確認することにより、薬が咽頭残留により「飲めていない」実態、適切な服薬の方法を本人、家族、医科を含めた多職種と共有することができた。嚥下障害があるにも関わらず多くの飲みにくい薬を処方されている高齢者は多い。往診にて服薬の実態を把握し、共有することの重要性が示唆された。

(COI開示:なし)