一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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教育

[O一般-043] 歯学部生の介護保険施設での介護実習前後の高齢者に対するイメージの変化について

○野口 哲司1、牧野 路子2、内藤 徹3 (1. JAみなみ信州歯科診療所、2. 福岡歯科大学総合歯科学講座訪問診療センター、3. 福岡歯科大学総合歯科学講座高齢者歯科学分野)

【目的】

我が国の高齢化率は平成29年度に27.7%に達し、要介護高齢者に対応するための知識と技術を有する歯科医師の養成が社会から求められている.我々は平成18年度より本学キャンパス内にある介護保険施設において,5年次学生を対象に介護実習を行ってきた.本研究では本実習が学生の情動面にどのような影響を及ぼすか評価するため,平成24年度より5年間,学生の高齢者に対するイメージの変化を調査してきたので報告する.



【方法】

対象は平成24年から5年間の介護実習を行った歯学部5年次学生、362名(男性208名、女性154名)。6日間の介護実習の前後に,Semantic Differential法(SD法)によって作成した質問紙を用いて,高齢者に対するイメージについて50項目の評価を実施.質問票は対比する形容詞で構成され、有能性、活動・自立性、幸福性、協調性、温和性、社会的外交性の6つに分類される。さらに、対象者の性別、実習施設(要介護老人保健施設/介護老人福祉施設)、祖父母との同居経験の有無について調査を行った。検定はWilcoxonの符号付順位検定(p<0.05)で行った。その後、因子分析を行い、観測変数がどのような潜在因子から影響を受けているか探索した。



【結果と考察】
全体では50項目中42項目で有意差を認めた。実習前では性別による違いは見られなかったが、実習後では性別間に変化が見られた。性別で共通して有意差を認めた項目は23項目で男性のみに認めた項目は10項目、女性のみは6項目であった。同居経験の有無では共通で有意差を認めたのは21項目、同居経験ありでは2項目、なしでは14項目であった。有意差が出た項目についてそれぞれ実習の前後で因子分析をした結果、男女間、同居の有無間で回答の潜在因子が異なることが分かった。検定結果及び因子分析の結果より介護実習を経験することで女性では、高齢者に対する共感、高齢者との心の距離、男性では、高齢者の能力の高さ、同居経験なしでは高齢者に対する情動、高齢者の活動性、同居経験ありでは、高齢者の能力の高さ、高齢者の活動性に対するイメージが変化したと考えられる。このことは要介護施設での介護実習が超高齢社会に適応した歯科医師養成の一助になることを示唆していると考えられる。