[P一般-003] 高齢者における臼歯部の咬合支持と舌口唇運動機能および嚥下機能の関係
【目的】
高齢者において,歯の喪失がオーラルフレイルを招き,舌運動や摂食嚥下機能の低下をもたらすことでフレイルに至る機序の解明が進められている。咀嚼機能に歯の喪失,特に臼歯部の咬合接触の状況は大きく影響する。しかし,咬合の喪失が舌口唇運動機能や嚥下機能に及ぼす影響の研究は十分とは言えない。そこで,本研究は臼歯部の咬合支持と舌口唇運動機能および嚥下機能の関連を明らかにすることを目的に行った。
【方法】
高齢者施設に入所する65歳以上の者1167を対象とした。調査期間は平成30年10月から平成31年1月末までであった。口腔内健診および舌口唇運動機能(OD),嚥下機能(RSST)の測定を歯科医師が行った。ODはパ,タ,カを10秒間に言える回数を測定し,1秒間当たりの値に変換した。RSSTは30秒間に行えた空嚥下の回数を測定し,3回以上を健常値とした。舌口唇運動機能の分析は臼歯部の咬合状態が両側ある者,片側ある者,ない者について舌口唇運動機能および嚥下機能を比較した。割合の差の検定はカイ2乗検定を用い,回数の比較はクラスカル-ウォリスの一元配置分散分析を用いて行った。嚥下機能の分析は嚥下状態を従属変数とし,臼歯部の咬合状態を説明変数として,ロジスティック回帰分析を行った。
【結果と考察】
義歯を含めた咬合状態で咬合が両側ある者,片側ある者,ない者でパタカの測定が可能な者の割合に有意に差が見られた(p<0.001)。パタカの測定ができた者について,回数を比較したところ,パとカについては有意に現在歯の臼歯部の咬合状態により回数に差が見られた(p<0.05)。さらに多重比較を行ったところ,両側ありの者と両側なしの者の間で回数に有意な差が見られた(p<0.05)。
義歯を含めた咬合状態で咬合が両側ある者,片側ある者,ない者でRSSTの測定が可能な者の割合に有意に差が見られた(p<0.001)。RSSTの測定ができた者について,義歯を含めた咬合状態で臼歯部の咬合がない者は,咬合が両側ある者に比べオッズ比1.5(95%信頼区間1.0-2.2)でRSSTが健常値未満であった。
以上より施設入所者の舌口唇運動機能維持には現在歯による臼歯部の咬合が関連し,嚥下機能維持には義歯を含む臼歯部の咬合状態が関連することが示唆された。
(COI 開示:なし)
(日本赤十字看護大学 研究倫理審査委員会 承認番号1910)
高齢者において,歯の喪失がオーラルフレイルを招き,舌運動や摂食嚥下機能の低下をもたらすことでフレイルに至る機序の解明が進められている。咀嚼機能に歯の喪失,特に臼歯部の咬合接触の状況は大きく影響する。しかし,咬合の喪失が舌口唇運動機能や嚥下機能に及ぼす影響の研究は十分とは言えない。そこで,本研究は臼歯部の咬合支持と舌口唇運動機能および嚥下機能の関連を明らかにすることを目的に行った。
【方法】
高齢者施設に入所する65歳以上の者1167を対象とした。調査期間は平成30年10月から平成31年1月末までであった。口腔内健診および舌口唇運動機能(OD),嚥下機能(RSST)の測定を歯科医師が行った。ODはパ,タ,カを10秒間に言える回数を測定し,1秒間当たりの値に変換した。RSSTは30秒間に行えた空嚥下の回数を測定し,3回以上を健常値とした。舌口唇運動機能の分析は臼歯部の咬合状態が両側ある者,片側ある者,ない者について舌口唇運動機能および嚥下機能を比較した。割合の差の検定はカイ2乗検定を用い,回数の比較はクラスカル-ウォリスの一元配置分散分析を用いて行った。嚥下機能の分析は嚥下状態を従属変数とし,臼歯部の咬合状態を説明変数として,ロジスティック回帰分析を行った。
【結果と考察】
義歯を含めた咬合状態で咬合が両側ある者,片側ある者,ない者でパタカの測定が可能な者の割合に有意に差が見られた(p<0.001)。パタカの測定ができた者について,回数を比較したところ,パとカについては有意に現在歯の臼歯部の咬合状態により回数に差が見られた(p<0.05)。さらに多重比較を行ったところ,両側ありの者と両側なしの者の間で回数に有意な差が見られた(p<0.05)。
義歯を含めた咬合状態で咬合が両側ある者,片側ある者,ない者でRSSTの測定が可能な者の割合に有意に差が見られた(p<0.001)。RSSTの測定ができた者について,義歯を含めた咬合状態で臼歯部の咬合がない者は,咬合が両側ある者に比べオッズ比1.5(95%信頼区間1.0-2.2)でRSSTが健常値未満であった。
以上より施設入所者の舌口唇運動機能維持には現在歯による臼歯部の咬合が関連し,嚥下機能維持には義歯を含む臼歯部の咬合状態が関連することが示唆された。
(COI 開示:なし)
(日本赤十字看護大学 研究倫理審査委員会 承認番号1910)