The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

PDFポスター

口腔機能

[P一般-006] 脳卒中回復期患者における舌圧と口腔状態およびADLとの関連性

○二宮 静香1,2、平塚 正雄1、藤井 航3 (1. 医療法人博仁会 福岡リハビリテーション病院歯科、2. 九州歯科大学・大学院・歯学研究科・口腔保健学専攻、3. 九州歯科大学・歯学部・口腔保健学科・多職種連携教育ユニット)

【目的】
 舌圧は客観的な口腔機能の指標として用いられ,食形態や高齢者の身体機能との関連性が報告されている。しかし,脳卒中回復期患者では調整食の摂取や経管栄養により舌圧が低値となり,口腔状態の悪化やADLの低活動などが予測される。急性期や生活期の施設における高齢者を対象にした舌圧に関連する報告は多いが,脳卒中回復期患者を対象とした報告は少ない。そこで,脳卒中回復期患者における入院時の舌圧と口腔状態およびADLとの関連性を明らかにする目的で検討した。
【方法】
 対象は当院に脳卒中リハビリテ-ション目的で入院し,歯科衛生士が口腔健康管理を行った65歳以上の脳卒中回復期患者35名(平均年齢78.4±6.9歳)とした。意識レベルはJapan Coma Scale(JCS)Ⅱ桁以上で,除外基準としてJCSⅢ桁の者は除外した。入院時に舌圧測定を含めた口腔アセスメントを行い,口腔状態についてはOral Health Assessment Tool日本語版(OHAT-J)を用いた。ADL情報は入院時に評価されたFunctional Independence Measure(FIM)を用い,栄養摂取方法についても調査した。統計処理は単回帰分析,重回帰分析をそれぞれ行った。
【結果と考察】
 舌圧を目的変数とした単回帰分析ではOHAT-J口唇の項目(β=-0.40,p=<0.05),FIM運動項目(β=0.43,p=<0.05),FIM認知項目(β=0.43,p=<0.05)および栄養摂取方法(β=0.62,p=<0.01)で有意な関連を認めた。さらに舌圧を目的変数とした重回帰分析(Stepwise法)では栄養摂取方法(β=0.51,p=<0.01)とFIM認知項目(β=0.30,p=<0.05)が独立した関連因子として抽出された。
 先行研究では経管栄養患者の舌圧は低値を示すことが報告されており,今回の結果と同様,経管栄養は舌圧に影響を及ぼすことが示された。また,FIM認知項目も舌圧と関連していたことから,脳卒中回復期患者における認知能力の程度は舌圧に影響を及ぼすことが示された。脳卒中回復期患者における随意的な舌圧の測定ではFIM認知項目の評価も重要になることが示唆された。
(COI開示:なし)
(福岡リハビリテ-ション病院医療倫理委員会承認番号FRH2019-D-002)