The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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症例・施設

[P一般-107] インプラントオーバーデンチャー治療によりQOLの向上が認められた高齢患者の1例

○高橋 恭彦1、鈴木  聡行1、永村 宗護1、平山 勝徳1、堀本 進1、菊地 幸信1、渡辺 真人1、平野 昌保1、小林 利也1、秋本 覚1、榎本 雅宏1、野村 勝則1、間宮 秀樹1、橋本 富美1、和田 光利1、片山 正昭1 (1. 藤沢市歯科医師会)

【目的】65歳以上の人口が21%を超えると「超高齢社会」と呼ばれ,我が国は2007年に超高齢社会へと突入した。これに合わせて高齢者のQOLへの関心は年々高まりつつある。今回,咀嚼機能の低下を訴える高齢者に対してインプラントオーバーデンチャー治療を行うことで咀嚼機能の改善とQOLの向上が認められた1例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】86歳,男性。初診:平成23年2月。主訴:上下義歯の不適合による咀嚼機能不全。現病歴:下顎は総義歯を使用しており,上顎は両側遊離端欠損で部分床義歯を装着していた。現症:残存歯には歯石沈着が認められ,下顎粘膜には旧義歯不適合により義歯性潰瘍が認められた。既往歴:16年前に大腸がんにて手術,高血圧症,Ⅱ型糖尿病,脂質異常症,高尿酸血症。処置:まず上顎は部分床義歯,下顎はシリコン床総義歯を新製し装着した。下顎総義歯は顎堤粘膜への吸着も良く,良好に経過していたが食事中に下顎総義歯が浮き上がることで硬固物が食べられないという不満から患者と奥様からインプラント治療を強く希望。全身的にはややコントロール不良のⅡ型糖尿病以外は問題ないと考え,術前抗菌薬の投与の許,平成31年3月に静脈内鎮静下にて33,43相当部にインプラントを2本埋入した。術中バイタルサインに異常所見は認められなかった。抜糸するまでの術後1週間は下顎義歯の装着を避けて頂く必要があり,舌でつぶせる冷凍柔らか食品や栄養補助食品などを紹介し体重減少,糖尿病治療薬内服による低血糖に留意した。インプラント埋入手術から荷重開始までの免荷期間は3カ月とし2019年6月ロケーターアタッチメントを使用しインプラントオーバーデンチャーを装着した。
【結果と考察】3カ月ごとの定期検診ではインプラント周囲炎および義歯性潰瘍は認められず良好に経過している。咀嚼機能が向上したことで野菜の摂取,食事量の増加といった食事バランスの改善が認められた。以前は,咀嚼困難により食欲低下や食事量の減少があり,同じく高齢の妻の調理負担も大きかったが,現在は普通食の咀嚼が可能となり妻の負担も軽減した。今回インプラント補綴を選択することで著しい咀嚼機能の改善が認められ,高齢者夫婦の確実なQOLの向上が得られ,高齢者に対して有益な治療法と考えられた。(COI開示:なし)(藤沢市歯科医師会倫理特別委員会承認番号2019-009)