The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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症例・施設

[P一般-111] コントロール不良の糖尿病患者に発症したカンジダ性味覚障害の1例

○木村 千鶴1、中川 紗百合1、尾崎 公哉1、岡田 和隆1、渡邊 裕1、山崎 裕1 (1. 北海道大学大学院歯学研究院口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室)

【目的】

味覚障害の原因の1つに全身性があり、その代表疾患が糖尿病である。糖尿病のコントールが不良になると、血清亜鉛値の低下、口腔乾燥、味蕾・味細胞の変性、ニューロパチー、糖尿病の治療薬など種々の影響で味覚障害が起こるとされているが、実際の症例報告は非常に少ない。一方、口腔カンジダ症も味覚障害の主要な原因となっている(日口外誌、57:493-500、2011年)。今回、初診時は糖尿病性の味覚障害が疑われたが、実際にはカンジダ性と思われた症例を経験したので報告する。

【症例の概要と処置】

 80歳、女性。既往疾患:2型DM、HT、脂質異常症。DMに関しては、2種の内服と1種の注射用血糖降下薬を使用していたが、コントロール不良で1年前からはHbA1cが徐々に上昇し、年明けからは9台になっていた。DM食のため、もとより味付けはうすかったがこの頃から甘味や味の濃いもの以外は何を食べても味が分からなくなった。近位歯科で相談したところ当科を紹介されX年7月、当科受診した。初診時BMI:29、HbA1cは9.4、尿糖+++であった。血清亜鉛値は71µg/dLと軽度低下を認めた。味覚検査では濾紙ディスク法で塩味のみ閾値の亢進が認められたが電気味覚検査や全口腔法では異常は認めなかった。診察上は口腔乾燥なく舌に明らかな異常所見を認めなかったが、カンジダ培養検査を施行したところ、Candida glabrataの増殖が認められたため、先ずミコナゾールゲルで除菌をすることにした。また、DM担当医に味覚異常の原因の可能性があり血糖コントロールを依頼した。

【結果と考察】

 ミコナゾールゲル(5g/日×7)使用後には味覚異常のVASは94から7と著明に改善し日常生活には問題なくなり以後4か月、経過観察したが再燃傾向を認めないため終了とした。なお、細菌学的にもカンジダの除菌が確認された。HbA1cは一時8.6まで低下したがまた9.0までまた戻った。DMのコントロール状態がほとんど変わらずに、カンジダの除菌のみで味覚異常が改善したことにより、本症例はカンジダ性の味覚障害が考えられた。