一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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一般演題(ポスター)

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口腔機能

[P一般-025] 口腔機能精密検査前後における患者の口腔機能に対する認識および関心の向上

○中田 悠1、大久保 真衣1、山澄 尚大1,2、渡部 友莉1、小林 健一郎2、石田 瞭1 (1. 東京歯科大学口腔健康科学講座摂食嚥下リハビリテーション研究室、2. こばやし歯科クリニック)

【目的】
口腔機能の維持,回復のためには適切な診断,管理,動機付けが重要とされている。しかし,患者が自身の口腔機能についてどの程度意識しているか,歯科医療者による管理で意識改善がみられるかは明らかでない。今回われわれは,歯科医療者の介入前後において患者の口腔機能に対する意識に改善がみられるかどうか検討した。
【方法】
対象は2019年10月から12月までの2か月間,某歯科診療所において,研究参加に同意が得られた50歳以上の初診患者18名(平均年齢74.9±10.7歳,男性9名,女性9名)とした。対象者には口腔機能に関する認識および関心についての質問紙調査を行い,その後口腔機能精密検査(以下,検査)を実施した。検査後,検査結果および口腔機能低下症について説明を行い,再度質問紙調査を行った。検査前後における患者の意識変化についてWilcoxonの符号順位検定を用いて比較検討した。
【結果と考察】
「口腔機能低下症を知っているか」という質問に対して,検査前では「詳しく知っている」は0名(0%),「なんとなく知っている」は2名(11.1%)であった。検査後では同質問に対する回答は「よくわかった」4名(22.2%),「ややわかった」9名(50.0%)と,口腔機能低下症への理解に有意な向上がみられた(p = 0.001)。「口腔機能の訓練は自分に必要であるか」の問に対して,検査前では「必要ない」と答えた者は全体の66.7%であったが,検査後では「必要ない」の回答が27.8%,「必要である」の回答が72.2%であり,口腔機能向上への意識に有意な増加がみられた(p = 0.002)。「口腔機能の検査はやった方がいいと思うか」の問に対しては,検査前「とてもそう思う」5.6%,「ややそう思う」55.6%であった。検査後においては「とてもそう思う」38.9%,「ややそう思う」50.0%となり,検査に対する意識に有意な向上がみられた(p = 0.012)。
本結果より,検査や説明によって患者の口腔機能に対する認識および関心の向上がみられることが明らかになった。口腔機能の維持向上のためには患者のモチベーション維持が重要となる。口腔機能精密検査という一時的な介入においても意識改善がみられたことから,定期的な介入がモチベーションの維持に繋がると考えた。
(COI開示:なし)
(東京歯科大学 倫理審査委員会承認番号:948)