The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

PDFポスター

口腔機能

[P一般-029] 地域在住自立高齢者における口腔機能低下症と身体機能との関連性についての検討

○泉野 裕美1、福田 昌代2、堀 一浩3、澤田 美佐緒2、畑山 千賀子1、氏橋 貴子2、重信 直人4、小野 高裕3 (1. 梅花女子大学看護保健学部口腔保健学科、2. 神戸常盤大学短期大学部口腔保健学科、3. 新潟大学大学院医歯学総合研究科包括歯科補綴学分野、4. YMCA総合研究所)

【目的】
 高齢者の口腔機能を維持することは適正な栄養摂取の維持に繋がり,健康寿命の延伸に大きな役割を果たす。これまでに,咬合状態,咀嚼,舌圧などの口腔機能とフレイルや身体機能との関連については報告されているが,口腔機能低下症と身体機能との関連を調査した報告はほとんどみられない。今回,地域在住自立高齢者の口腔機能低下症項目の評価を行い,身体機能との関連を検討したので報告する。
【方法】
 対象者は体力測定会に参加した65歳以上の地域在住自立高齢者69名(男性26名,女性43名,平均年齢75.5±5.3歳)とした。調査内容は,年齢,性別,口腔機能低下症評価の7項目と,身体機能として体力測定6項目(開眼片足立ち保持時間・長座体前屈・ファンクショナルリーチテスト・最大握力・タイムドアップ&ゴーテスト・30秒椅子立ち上がりテスト)を評価した。分析はχ二乗検定およびMann-Whitney U 検定を行い,口腔機能低下症と年齢,および身体機能との関連性を比較検討した。
【結果と考察】
 口腔機能低下症と診断された対象者は69名中48名(69.6%)であった。口腔機能低下症評価項目の該当割合は,口腔衛生状態不良(92.8%)が最も高く,次いで口腔乾燥(72.5%)であった。前期高齢者と比較して後期高齢者は口腔機能低下症の割合が高い傾向がみられた(p=0.06)。特に口腔衛生状態不良と嚥下機能低下の項目では有意差が認められた(p<0.05)。口腔機能低下症と各身体機能測定結果との関連では,口腔機能低下症と診断された群で開眼片足立ち保持時間が有意に短く,30秒椅子立ち上がり回数および最大握力が有意に低値を示した(p<0.01)。これらの結果より,高齢者のバランス能力や全身の筋力低下は口腔機能低下症に影響を与える可能性が示唆された。潜在的に存在する口腔機能低下症患者の対応においては,口腔機能の評価だけでなく高齢者の身体機能にも注意を払い,包括的なアプローチを行う必要があると考える。高齢者には多様な背景が存在するため,今後は,社会的要因や精神身体的要因なども視野に入れ,口腔機能低下症を多角的な側面から検討していく必要がある。
 (COI開示:なし)
 (梅花女子大学 倫理審査委員会承認番号 0010-0091)