The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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連携医療・地域医療

[P一般-038] 歯科衛生士が中心となり多職種で口腔機能管理を行った1症例 ―回復期脳卒中患者への対応―

○鈴木 絢子1、吉見 佳那子1,2、中川 量晴1,2、中島 祐子1 (1. 原宿リハビリテーション病院 歯科、2. 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野)

【目的】

原宿リハビリテーション病院は,主に脳血管障害および整形外科疾患を対象とする332床の回復期病院で,歯科では入院患者の口腔機能管理を行っている。歯科衛生士は診療室・病棟での口腔衛生管理だけでなく,嚥下回診や摂食嚥下カンファレンスに参加し,オーラルマネージメントの啓発・教育活動も担当している。今回,歯科衛生士が中心となり口腔機能管理を行い,円滑な摂食嚥下リハビリテーションを行えた症例を報告する。

【症例の概要と処置】

74歳の男性。脳梗塞(右大脳半球・左縁上回)を発症し,急性期病院で保存的加療後,当院に入院した。入院6日後に口腔衛生不良と歯肉からの出血のため歯科受診の依頼を受けた。初診時の口腔内は,乾燥著明で残根・歯頚部周囲が汚染されており口腔衛生状態は極めて不良であった。また患者の血液凝固能に異常は認めなかったが,歯肉は易出血性で口腔ケアが困難であった。また舌機能の低下を認めた。Oral Health Assessment Tool(OHAT)は合計スコア10,FOISは2であった。嚥下機能評価を実施後,経口摂取を開始するにあたり,まず口腔環境を改善するため,歯科が介入し保存困難歯の抜歯および口腔衛生管理を開始した。

【結果と考察】

歯科衛生士は週5日口腔衛生管理を実施した。また抜歯後出血により日常の口腔ケアが困難であったため,看護師,言語聴覚士に口腔ケア方法を指導し,チーム全体で口腔管理を行った。摂食嚥下カンファレンスでは歯科衛生士が口腔衛生状態や口腔機能の変化を報告することで,多職種で情報を共有し,リハビリ目標の設定や適切なアプローチが行えた。歯科衛生士介入後のOHATスコアは合計スコア2で口腔衛生状態が著しく改善し,患者は肺炎兆候なく経口摂取を確立した。さらに患者自身が口腔管理を実施できるよう口腔衛生指導を継続した。脳卒中発症後の高齢患者は,全身的な問題に加え口腔にも問題がある場合が多く,まず口腔環境を整え「食べられる口」にすることが重要である。よって回復期病院においては,歯科衛生士による口腔衛生管理や他職種への教育は必要不可欠であり,シームレスな連携によって,口腔機能管理を行い,摂食嚥下機能の向上による栄養状態の改善やQOLの向上に繋げて行きたい。

(COI開示:なし)