The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

PDFポスター

実態調査

[P一般-055] 当院において歯科訪問診療を行った患者の欠損歯列の病態についての3年間の年次推移

○三重野 花菜1、尾立 光1、末永 智美1,2,3、金本 路2、本田 優香1、山本 健太1、煙山 修平1、吉野 夕香4、川上 智史5、會田 英紀1 (1. 北海道医療大学歯学部高齢者・有病者歯科学分野、2. 北海道医療大学病院在宅歯科診療所、3. 北海道医療大学病院歯科衛生部、4. 北海道医療大学病院地域連携室、5. 北海道医療大学歯学部高度先進保存学分野)

【目的】

本学では、開院・開所以来、地域の保健医療機関や介護事業所などとの連携を図りながら歯科訪問診療を行っている。高齢者のみならず、人々への歯科的介入が口腔機能を維持し、QOLを向上させることは論を待たないところである。本研究の目的は、本学施設が歯科訪問診療を実施している患者の欠損歯列の病態の年次推移を把握することである。

【方法】

平成28年4月から平成31年3月までの3年間に歯科訪問診療を実施した全ての患者を対象として、後ろ向き調査を行い、各年度のデータを比較した。

【結果と考察】

平成28、29、30年度の患者総数はそれぞれ292名(平均83.7±8.9歳、男性/女性:90/200名)、276名(平均83.7±9.1歳、男性/女性:78/198名)、262名(平均84.9±8.7歳、男性/女性:68/194名)であった。また、延べ診療件数はそれぞれ4,340件、3,809件、4,196件であった。各年度ともに対象患者全体の約98%を前期および後期高齢者が占めており、そのうち後期高齢者は全体の約85%を占めていた。なお、平成28年度の全対象患者292名のうち、平成30年度まで歯科訪問診療を継続している患者は88名であり、この間に欠損が拡大して宮地の咬合三角のエリアが下がった患者は3名であった。このうち2名は第Ⅰエリアから第Ⅱエリアへの変化であり、残りの1名は第Ⅲエリアから第Ⅳエリアへの変化であった。抜歯に至った原因は、重度歯周疾患と歯肉縁下におよぶ齲蝕であり、口腔衛生状態の不良が主な原因と推測された。一方、平成28年の時点で第Ⅰ~Ⅲエリアに分類された52名のうち、当該エリアを維持していた患者は49名であり、そのうち当院の歯科衛生士または施設衛生士による口腔衛生指導が行われている患者は43名(87.8%)であった。以上のことから、定期的に継続した口腔衛生管理を行うことは、口腔環境の維持・向上に有効であるとともに、歯科疾患の早期発見・早期治療が可能となり、欠損歯列の拡大防止につながると考える。さらに、歯列欠損の拡大防止のためには、口腔衛生指導の継続的な実施と、患者家族や医療・介護関係者との連携を図る環境整備が必要であると考える。
(COI開示:なし)

(北海道医療大学 臨床研究倫理審査承認番号 第2019-022号)