The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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実態調査

[P一般-071] 在宅パーキンソン病患者の運動障害と嚥下障害に関する実態調査

○梅本 丈二1、岩佐 康行2、尾崎 由衛3、道津 友里子1、佐野 大成1、溝江 千花1 (1. 福岡大学病院摂食嚥下センター、2. 原土井病院歯科、3. 歯科医院丸尾崎)

【目的】パーキンソン病(PD)は,適切な治療により発症後10年程度はADLが保たれることが多い。しかし嚥下障害には有効な治療法が少なく、患者も嚥下障害の自覚に乏しいことがある。そこで,在宅PD患者を対象に運動障害と嚥下障害の実態を明らかにする目的で調査を行った。

【方法】PD友の会福岡県支部会員のPD患者で,2017年~2019年の福岡,北九州,筑豊の各ブロックの調査会に参加した88名(平均年齢72.0±7.5歳、男性50名、女性38名)を対象とした。PDの運動機能(UPDRSpart3),薬物療法の奏功状態(wearing-offの有無)と内服状況,スクリーニング嚥下障害質問票(SDQ),食形態や増粘剤使用,舌圧や口腔内細菌数について調査した。

【結果と考察】参加者のPD平均罹病期間は9.6±6.0年であった。68名(77%)が普通食摂取で,4名が水分に増粘剤を使用していた。体格指数(BMI)18.5未満は6名(6.8%)であった。加齢や罹病期間の長期化とともにBMIが低下する傾向がみられた(R=0.224,p=0.05;R=0.228,p=0.05)。さらに罹病期間の長期化に伴ってSDQスコアが悪化する傾向はあったが(R=0.228,p=0.05)、BMIとSDQスコアの間に相関関係は認められなかった。次にUPDRSpart3とSDQスコアの間(R=0.306,p=0.007)、口腔内細菌数とSDQスコアの間(R=-0.284,p=0.01)には有意な相関関係が認められた。またwearing-off現象のある患者は,ない患者よりも高率で薬の嚥下困難感(47% vs 8.3%,p<0.01)や咽頭部停滞感(40% vs 8.3%,p<0.05)を自覚していた。
 PD患者の多くは嚥下機能が保たれていたが,運動機能低下に伴って嚥下障害の自覚症状が出現する傾向が認められた。しかし体重減少は嚥下障害との関連性に乏しく,他の要因が影響している可能性がある。一方,嚥下障害の自覚症状出現に伴って口腔内細菌数は減っており,口腔乾燥が原因として考えられた。普通食摂取でも薬の嚥下困難感や咽頭部停滞感を自覚するPD患者が少なくなく,運動機能低下,wearing-offの出現,嚥下障害の進行,服薬困難が相互に関連している可能性が示唆された。
(福岡大学倫理審査委員会承認番号2018M049)