The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

PDFポスター

実態調査

[P一般-075] 口腔機能の低下を主訴に歯科外来を受診した高齢者の実態調査

○濱田 理愛1、田中 信和2、野原 幹司1、清水 享子2、阪井 丘芳1 (1. 大阪大学 大学院歯学研究科高次脳口腔機能学講座顎口腔機能治療学教室、2. 大阪大学歯学部附属病院 顎口腔機能治療部)

【緒言】

 我が国では,構音や摂食嚥下の障害など口腔機能の低下を主訴に歯科を受診する高齢者が増加している。高齢者において口腔機能の低下は,加齢変化や活動性の低下による廃用により生じることが知られている。しかしその一方で,全身疾患の一症状として口腔機能の低下が生じる疾患も多い。口腔機能の低下が生じている原因が異なれば,その必要とされる対応も異なる。 そのため,口腔機能低下の原因を正しく評価し,適切な対応をとることが今後の歯科医療の重要な課題と考えられる。そこで今回,口腔機能の低下を主訴に歯科を受診する高齢者の実態を調査するため,当部を受診した患者の原因疾患,ならびに実施した対応等を調査した。

【対象と方法】

 対象は,構音障害あるいは,摂食嚥下障害を主訴に当部を初診で受診した高齢者。その中で,紹介元なし,あるいは歯科からの紹介で受診した80名(平均73.7±9.1歳)とした。調査内容は,1)主訴に関わる原因疾患の有無(診断の有無),2)当部での診察や評価の結果疑われた原因疾患,3)初診後の対応やその後の経過,を診療記録より確認した。

【結果】

 80名中,初診時に主訴に関する原因疾患が明らかだったのは31名,不明だったものが49名(61%)であった。また,原因が不明であった49名について,当部での評価の結果疑われた疾患は,多い順から,神経筋疾患,機能障害なし(共に18%),消化器疾患(14%),口腔機能の問題(10%),薬剤の副作用,原因不明(共に8%),脳血管障害(6%)となった。さらに49名への対応としては多い順に,他科紹介(46%),診査の結果,異常なく略治(24%),経過観察(22%),その他(6%)となった。また,主な紹介科は脳神経内科であった。

【考察】

 口腔機能の低下を主訴に受診した高齢者は,半数以上で原因疾患が不明な状態で当部を受診していた。そのなかで,純粋に口腔機能の低下が原因であった者は少なく,その原因は多様であった。さらに多様な原因のなかには,疾患の初発症状だった者,薬剤の副作用だった者も含まれており,歯科受診を通して,確定診断,症状の改善につながった症例も少なからず存在した。以上から高齢者の口腔機能低下では,呈している症状だけでなく,その症状の原因を探ること,必要に応じて他科との連携をはかることの重要性が示された。 (大阪大学倫理審査委員会承認番号:H30-E45)