The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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全身管理・全身疾患

[P一般-090] 抗リウマチ薬の休薬と口腔衛生管理がメトトレキサート関連リンパ増殖性疾患に奏功した症例

○中濵 加奈子1、坪井 綾香2,4、猪原 健2,3、松永 一幸1,2,3,4 (1. 社会医療法人 祥和会 脳神経センター大田記念病院 歯科診療課、2. 社会医療法人 祥和会 脳神経センター大田記念病院 歯科、3. 医療法人社団 敬崇会 猪原歯科・リハビリテーション科、4. 岡山大学病院 歯周科)

【目的】
 関節リウマチ患者は年々増加傾向にあり,それに伴って抗リウマチ薬であるメトトレキサート(MTX)服用患者数も増加している。MTX関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)は口腔領域では舌や歯肉などの軟組織に発症する頻度が高いが,顎骨壊死の報告もある。そのため,臨床診断では口内炎,重度歯周炎,ビスフォスフォネート関連顎骨壊死との鑑別は困難な場合が多い。今回,顎骨壊死を伴うMTX-LPD患者に対して,MTX休薬と徹底した口腔衛生管理が奏功した症例を経験したため報告する。

【症例の概要と処置】
 72歳,男性。158.5cm,63.0kg,BMI 25.1。既往歴は関節リウマチ,2型糖尿病等多数あった。20種類以上の薬剤を服用していて,関節リウマチに対してはMTXの服用があった。2019年4月に16部歯肉の自発痛および接触痛を覚えたため,近医を受診したところ,重度歯周炎を指摘された。多数の全身疾患を有するため,口腔外科での精査加療を勧められ,同科で16部歯肉生検を受けたところ,症状は悪化し,食事摂取は困難となった。その後全身倦怠感と39℃台の発熱が出現したため,かかりつけである当院医科を受診し,緊急入院となった。入院中に口腔外科から生検結果の情報提供を受け,16部はMTX-LPDであることが明らかになった。入院5日後に当院歯科へ紹介となり,7日後にMTX休薬が行われた。入院当初から口腔衛生状態は非常に不良であり,多量の歯石沈着と歯垢付着があった。16部口蓋側歯肉は広範な潰瘍に加えて,近心に壊死骨の露出を認めた。入院中は歯科スタッフによる口腔衛生管理を毎日1回実施し,定期的に歯肉の状態を評価した。

【結果と考察】
 MTX休薬と徹底した口腔衛生管理によって,入院14日後には16部歯肉の接触痛と発赤は軽減し,食事を全量摂取出来るまでに改善した。7月末に壊死骨は自然排出され,8月末の歯肉生検において歯肉上皮の正常化を確認したため,歯槽骨の吸収が顕著な16および17の抜歯処置を行い,その後問題なく経過している。本症例では医科歯科連携の下,比較的早期に適切な診断と治療方針を決定し,口腔内の感染と炎症を制御したことが, MTX-LPDの寛解に繋がったと考える。MTX服用患者の口腔疾患においては,MTX-LPDの可能性があることを考慮した上で口腔管理を行っていくことが重要である。