The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

一般演題(ポスター)

PDFポスター

全身管理・全身疾患

[P一般-094] NETsに焦点をあてた歯周病と循環器系疾患に関する分子生物学的研究

○弘田 克彦1、大野 由香1、中石 裕子1、坂本 まゆみ1、野村 加代1、和食 沙紀1、濱田 美晴1、内田 智子1 (1. 高知学園短期大学歯科衛生学科)

目的】歯周病が循環器系疾患や肺炎などの全身疾患のリスクファクターになっていることが報告されている。しかし、今なお歯周病を放置している人々がいることも事実である。現状を改善するには、さらに多くの歯周病と全身疾患を関連づける新たなメカニズムを分子生物学的手法で解明することが必要である。Neutrophil extracellular traps(NETs)は、自然免疫における感染防御機構である。しかし一方では過剰なNETsは諸刃の剣で、歯周病が関係する多くの全身疾患に共通する血栓症増悪因子の一つでもある。本研究では、歯周病原菌Porphyromonas gingivalisにヘム鉄を供給するPseudomonas aeruginosaが産生するピオシアニンが、血栓症に関与する可能性を分子生物学的に明らかにすることを目的とする。

【材料および方法】本研究に同意が得られた20代前半の男女の健常者から採血された血液を供試した。モノ・ポリ分離溶液を用いて得られた好中球をPBSで洗浄後、細胞浮遊液の細胞数を1×105個/mLに調整した。ピオシアニン(5mg/mL,Cayman Chemical)を1000µMに調整した。チャンバースライドに細胞浮遊液900µLとピオシアニン100µLを加え、ピオシアニン最終濃度を100µMとした。さらに、4×103個/mLに調整した赤血球浮遊液を添加し、37℃、5%CO2の条件下で4時間静置した。その後、MG染色とMPO染色(武藤化学株式会社 15631)を行い、光学顕微鏡でピオシアニン添加、無添加時と赤血球の有無におけるNETs様構造変化を比較した。

結果と考察】ピオシアニンが過剰なNETs様構造誘導因子になることが再確認された。さらに、NETs様構造変化に赤血球が絡まることで、NETs様構造エリアがXYZ軸方向に拡大する像が確認できた。MPOが細胞外に放出され、各種血液細胞に飛び散り付着する像も多数観察された。本研究より、生菌ではなく臨床でみられる濃度のピオシアニンだけでも、好中球が感染防御の役割として細胞外トラップを形成すること、さらに一方では、これが血栓症となるリスクがあることが示唆された。さらに今後詳細に検討する必要があると思われる。

(本研究は高知学園短期大学研究倫理審査委員会令和元年度承認番号第2号を得ている)(COI開示:なし)