The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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愛知県歯科医師会特別シンポジウム

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オーラルフレイル・口腔機能低下症と認知症の関連について ~厚生労働省老人保健健康増進等事業2年目の取り組みから~

座長:冨田 健嗣(愛知県歯科医師会地域保健部(高齢福祉・歯科医療センター))

[SY1-1] 地域住民を対象とした口腔機能検診の効果および認知機能との関連

○内堀 典保1 (1. 一般社団法人愛知県歯科医師会会長)

【略歴】
1978年:
愛知学院大学歯学部卒
1982年:
藤田学園保健衛生大学医学部大学院修了(医学博士号授与)
1982年:
名古屋市中村区にて開業
歯科医師会関係
1991年4月:
名古屋市中村区歯科医師会理事
2003年4月:
愛知県歯科医師会理事
2007年4月:
愛知県歯科医師会代議員
2011年4月:
愛知県歯科医師会副会長
2011年4月:
日本歯科医師会代議員(現任)
2017年6月:
愛知県歯科医師会会長(現任)

厚生労働省関係

1997年10月:
医政局医療課ワーキンググループ委員
審査員関係
1997年6月:
愛知県国民健康保険団体連合会  審査員
1999年6月:
愛知県社会保険診療報酬支払基金 審査員
2009年6月:
愛知県社会保険診療報酬支払基金 審査員

賞罰

2012年3月:
日本公衆衛生協会長表彰
2012年10月:
日本歯科医師会会長表彰

愛知県歯科医師会では2018(平成31)年および2019(令和元)年に、愛知県知多郡東浦町において、要介護者を除く65歳以上の町民を対象とし、口腔機能および筋力、認知機能等の調査を行った。同時に、口腔機能の維持・向上の啓発効果をねらい、口腔機能低下症の説明用リーフレット配布や個人結果の通知を行った。

 2018年の調査参加者の口腔機能低下症該当者率は63.0%であったが、2019年では48.6%に低下していた。7つの口腔機能検査項目のそれぞれをみると、舌口唇運動機能低下者の割合は79.1%から54.5%に減少、咀嚼機能低下者割合は9.8%から3.2%に減少、嚥下機能は10.4%から6.6%へ減少し、改善がみられた。それ以外の口腔機能では大きな差はみられなかった。本事業による啓発効果により、町民の口腔機能に対する意識が高まったと考えられる。

 さらに2年連続で調査を受診した者と単年のみの検査受診者全体を比較すると、2年連続で調査を受診した者の2019年の口腔機能低下者割合は41.3%であり、それ以外の者の52.4%と比べると、明らかに口腔機能低下者割合は少なかった。この差は、本事業へ参加したことによる参加者自身の口腔機能状態の把握や配布資料による知識向上等によるものと推察される。

 認知機能の検査は改訂長谷川式簡易知能評価スケールを用いた。平均27.8点で、認知症が疑われる者の割合は約2.5%であった。各個人の口腔機能低下がみられた検査結果の数を口腔機能低下数とし、改訂長谷川式簡易知能評価スケールの得点と口腔機能低下数との相関をみると、得点が低いほど口腔機能低下数が増加した(r=-0.24, p<0.001)。また各口腔機能との関連は、咬合力(r=0.14, p<0.001)、舌口唇運動(r=0.27, p<0.001)および舌圧(r=0.16, p<0.001)と関連がみられた。認知症が疑われる割合が低いにも関わらず、筋力が関係する口腔機能と有意な相関がみられたことは、口腔機能の低下が認知症の早期発見のマーカーとなる可能性を示唆するものである。今後も継続的な調査をしていく必要があると思われる。

(COI開示:なし)

愛知県歯科医師会倫理審査委員会承認番号 愛歯発第302号