The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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口腔乾燥症 共同シンポジウム

ライブ

【質疑応答・ディスカッション】口腔乾燥症新分類案

Sat. Nov 7, 2020 2:40 PM - 2:50 PM A会場

座長:服部 佳功(東北大学大学院歯学研究科加齢歯科学分野)、岩渕 博史(神奈川歯科大学大学院歯学研究科顎顔面病態診断治療学講座顎顔面外科学分野)

[SY4-2] 4学会合同口腔乾燥症用語・分類検討委員会作成 ―口腔乾燥症の新分類(案)―

○伊藤 加代子1、服部 佳功2、岩渕 博史3、山本 一彦4、中川 洋一5、土井田 誠6、山内 智博7、中村 誠司8 (1. 日本老年歯科医学会,新潟大学医歯学総合病院 口腔リハビリテーション科、2. 日本老年歯科医学会,東北大学大学院歯学研究科 加齢歯科学分野、3. 日本口腔内科学会,神奈川歯科大学大学院歯学研究科 顎顔面病態診断 治療学講座 顎顔面外科学分野、4. 日本口腔内科学会,奈良県総合医療センター口腔外科、5. 日本歯科薬物療法学会,鶴見大学歯学部附属病院 口腔機能診療科、6. 日本歯科薬物療法学会,杉田玄白記念公立小浜病院 歯科口腔外科、7. 日本口腔ケア学会,がん・感染症センター 都立駒込病院 歯科口腔外科、8. 日本口腔ケア学会,九州大学大学院歯学研究院 口腔顎顔面病態学講座 顎顔面腫瘍制御学分野)

【略歴】
1998年:
九州歯科大学卒業
2002年:
九州歯科大学大学院修了
2002年:
(財)長寿科学振興財団 リサーチ・レジデント
2005年:
新潟大学医歯学総合病院加齢歯科診療室 助教
(現口腔リハビリテーション科)
2015年:
新潟大学医歯学総合病院口腔リハビリテーション科 病院講師

口腔乾燥を訴える者は増えており,口腔乾燥をもたらす原因の分類や治療方針などの作成が望まれる.2005年に始まった日本口腔粘膜学会(現:日本口腔内科学会)の用語・分類検討委員会では,口腔乾燥症(ドライマウス)の分類案を作成し,数度の議論を重ねて改訂を行った後,2008年9月19日に行われたワークショップでその最終案を示した.しかし,他学会や医療機関などでは,独自の分類が用いられており,見解の一致を得ることが困難であった.今後の医療連携や学生教育を考えると,「口腔乾燥症の分類,治療指針」の統一が必要であると考え,日本口腔内科学会,日本歯科薬物療法学会,日本口腔ケア学会と本学会による4学会合同で「口腔乾燥症の分類,治療指針」の作成を行うこととなった.本委員会は2017年12月12日より開始され,数々の議論を経て,口腔乾燥症の新分類(案)作成に至った.新分類案は,2019年9月21日に行われた第29回日本口腔内科学会で公表された.

本分類案では,口腔乾燥症を,「自覚的な口腔乾燥感と他覚的な口腔乾燥所見(唾液の量的減少と唾液の質的変化を含む)のいずれかを認めるもの」と定義した.すなわち,唾液分泌量の減少が認められなくても,口腔乾燥感を有する場合は,口腔乾燥症であるとみなしている.さらに,「唾液分泌量の減少あるいは分泌唾液の質的変化があるもの」,「唾液分泌量の減少および分泌唾液の質的変化がないもの」に分類し,前者には,唾液腺実質障害,唾液分泌刺激障害,全身性障害,特発性のものが,後者には,全身的な原因によるもの,口腔に原因があるもの,薬剤性,特発性のものが含まれる.

今回,本分類案について概説し,参加者に広く意見を求めることで,より臨床に即し,多くの教育機関および医療機関で使用可能な分類作成につなげたいと考えている.


4学会合同口腔乾燥症用語・分類検討委員会

口腔乾燥症の新分類(案)



口腔乾燥症とは:自覚的な口腔乾燥感と他覚的な口腔乾燥所見(唾液の量的減少と唾液の質的変化を含む)のいずれかを認めるもの



1. 唾液分泌量の減少あるいは分泌唾液の質的変化があるもの

1) 唾液腺実質障害

(1) 唾液腺形成不全または欠損

  ・唾液腺無形成

  ・唾液腺の摘出または外傷

(2) 唾液腺組織の器質的変化または障害

  ・唾液腺腫瘍

  ・頭頸部の放射線治療

  ・慢性唾液腺炎

Sjögren症候群

慢性移植片対宿主病

細菌感染症

ウイルス感染症(HIV,CMVなど)

・薬剤性唾液腺組織障害

抗悪性腫瘍薬など 

(3) 導管炎

  ・唾石症

  ・導管の閉塞

2) 唾液分泌刺激障害

(1) 中枢性唾液分泌刺激障害

  ・精神疾患

  ・精神的ストレス

  ・頭蓋内疾患

脳卒中,脳腫瘍,認知症など

  ・更年期障害

(2) 末梢性唾液分泌刺激障害

  ・薬剤性唾液分泌抑制

Ca拮抗薬,抗ヒスタミン薬,三環系抗うつ薬,向精神薬,オピオイド,抗コリン薬,利尿薬など

  ・咀嚼機能低下

咀嚼筋,表情筋の筋力低下,義歯・歯の欠損

  ・末梢神経損傷

顔面神経麻痺,舌咽神経麻痺

  ・口腔感覚障害

味覚障害

3) 全身性障害

  ・脱水

人工透析,皮膚から水分喪失(発熱,多汗),消化管からの水分喪失(嘔吐,下痢),胸水・腹水貯留,糖尿病,尿崩症,尿濃縮能低下,甲状腺疾患,利尿薬など

  ・貧血

4) 特発性



2. 唾液分泌量の減少と分泌唾液の質的変化のいずれもないもの

1) 全身的な原因によるもの

  ・精神疾患

  ・心因性を思わせる原因不明疾患

2) 口腔に原因があるもの

  ・蒸発

口呼吸の習慣,鼻閉,顎変形・歯列不正,顎関節脱臼など

  ・感覚障害

口腔内灼熱症候群,口腔粘膜の障害など

3) 薬剤性

4) 特発性