The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認知症シンポジウム

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認知症の人の口を支えるために

座長:平野 浩彦(東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科)

[SY7-4] 認知症の人の緩和ケアにおいて歯科に求められていること

○枝広 あや子1 (1. 東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム 認知症と精神保健)

【略歴】
2003年:
北海道大学歯学部卒業:
同年、東京都老人医療センター歯科・口腔外科臨床研修医
2005年:
東京歯科大学オーラルメディシン・口腔外科学講座入局
2008年:
東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員
2011年:
学位取得、博士(歯学)東京歯科大学
2012年:
東京都豊島区歯科医師会、東京都豊島区口腔保健センターあぜりあ歯科診療所勤務
東京都健康長寿医療センター研究所非常勤研究員
2015年:
東京都健康長寿医療センター研究所研究員。現在に至る。

日本老年歯科医学会認定医、日本咀嚼学会健康咀嚼指導士、日本口腔外科学会、日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士、日本静脈経腸栄養学会TNT研修終了、認知症の人の食支援研究会、日本老年医学会高齢者栄養療法認定医、日本認知症学会、日本認知症ケア学会、日本歯科衛生学会、日本心身医学会。専門は老年歯科医学、口腔外科学など

現在,新オレンジプランにおいて認知症患者に対する病状を踏まえた適時適切な歯科医療の提供というフレームが提示され,歯科医師の認知症対応力向上研修が実施されているが,その内容は“外来診療の枠組みにおける認知症対応力の向上”にとどまっている.その理由は認知症患者の緩和ケアに対する歯科の参画がいまだ一般的ではなく,またエビデンスが不十分であるからともいえる.2019年に発刊した認知症の人への歯科治療ガイドライン作成段階において,認知症の緩和ケアにおける歯科のエビデンスを収集したが,歯科医学分野からのエビデンスは希少であり,多くは老年看護分野からの文献で,かつ比較対象研究が困難である分野であるために質的な研究が中心であった.ガイドラインでは,現段階でわが国で実施されうる歯科医療を示すという目的で,認知症の緩和ケアにおいて歯科に期待されうる役割を提示した.

 緩和ケアに関するこれまでの議論の中では,認知症患者のquality of end-of-life care を向上させ,家族の心理的負担を軽くするため,食や口腔衛生を含む全般的なケア方針を形成するためのプロセスであるアドバンスケアプランニング(advanced care planning:ACP)が重要であると認識されてきた.ACPは本人の希望と家族や医療介護チームの話し合いに始まり,ACP のプロセス全体をとおして口腔に関する専門家(歯科医療従事者)との定期的な関わりを持つことは,介護者教育や本人家族とのコミュニケーションを支える観点からも重要視される.したがって認知症の診断がされた時から緩和ケアの一端は始まっており,歯科医療の対象がどんな重症度であっても予知的な関わりや話し合いを通したComfortケアへの歯科的支援が可能であるといえる.

 昨今の歯科医療従事者は、外来、在宅や介護保険施設等での認知症の人への歯科診療のみならず、食の支援のチームに関わることが求められ、さらには通いの場における専門職の参画をも求められるようになった。認知症の人本人との対話を通じ、口腔や食という切り口から認知症の人の生きざま、最期のときまでどのように生ききりたいかという望みを知りうるのも我々であり、歯科医療技術をもってquality of end-of-life careに貢献できる可能性があるのも我々である。シンポジウムでは事例も交え、認知症高齢者の緩和ケアにおける歯科の可能性について議論したい。

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