一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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超高齢者に安全な歯科医療を提供するために

座長:片倉 朗(東京歯科大学口腔病態外科学講座)

[SY8-3] 高齢者の歯科診療で知っておくべきガイドライン ー抗血栓療法、抗菌薬、MRONJ(ARONJ)のガイドラインを中心にー

○田中 彰1 (1. 日本歯科大学新潟生命歯学部)

【略歴】
1990年:
日本歯科大学新潟歯学部卒業
1994年:
日本歯科大学大学院新潟歯学研究科修了
2012年:
日本歯科大学新潟病院 口腔外科 教授
2013年:
ベルン大学医学部 頭蓋顎顔面外科学講座 留学
2014年:
日本歯科大学新潟生命歯学部 口腔外科学講座 教授

現在に至る

超高齢化社会の到来と、医療の進歩に伴い、様々な疾患に罹患した高齢者に歯科治療、口腔衛生管理を行うことが日常化している。加齢による生理学的特徴に加え、疾病特異的な症状と投与薬物の有害事象等により歯科治療の際には、特別な配慮を要する事項が多く、臨床上苦慮することが少なくない。

 高齢者に多い代表的疾患である脳血管障害、心疾患においては、治療だけでなく、疾患の再発予防などに抗凝固薬、抗血小板薬などによる抗血栓療法が行われる。日本老年歯科医学会では、日本有病者歯科医療学会、日本口腔外科学会と共同で2010年に「科学的根拠に基づく抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン 2010 年版」を上梓したが、その後の状況変化に伴い、新たなエビデンスと国際的に多く採用されているGRADEシステムを採用した「抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン 2020年度版」の公表に向けて作業を進めている(2020年1月現在)。

 一方、高齢者に対する薬物投与もリスクが高い。特に抗菌薬の処方に関しては、腎機能、肝機能の低下や種々の基礎疾患、服用薬剤との相互作用を念頭におく必要があるほか、ポリファーマシーや長期連用により蓄積されるリスクについても配慮を要する。日本感染症学会、日本化学療法学会では、「JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2016 ―歯性感染症―」を策定し、歯性感染症に対する抗菌薬使用に関する見解を示したほか、抗菌薬乱用が問題となる中で、日本感染症学会、日本外科感染症学会は、「術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン」を2016年に公表した。

 さらに、骨粗鬆症患者やがんの骨転移患者などに投与される骨吸収抑制薬や血管新生阻害薬に関連して発症する顎骨壊死を、薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)または骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)と呼称する。これらについては、最新の指標として、米国口腔外科学会(AAOMS)が2014年に、本邦では関連する6学会(日本骨代謝学会、日本骨粗鬆症学会、日本歯科放射線学会、日本歯周病学会、日本口腔外科学会、日本臨床口腔病理学会)が2016 年に策定したポジションペーパーが公表されている。休薬に関わる事項や、治療、予防に関わる最新の見解が記載されている。

 本シンポジウムでは、時間の許す限り、この3点について各ガイドラインを紹介したい。

(COI開示:なし)





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