The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

病院歯科・病診連携シンポジウム

オンデマンド動画

総合病院における歯科の役割

座長:田中 彰(日本歯科大学新潟生命歯学部 口腔外科学講座)、寺中 智(足利赤十字病院 リハビリテーション科)

[SY9-2] 医科病院における歯科の役割を歯科の専門性から考える

○今井 裕1 (1. (一社)日本歯科専門医機構理事長 獨協医科大学名誉教授・特任教授)

【略歴】
生年月日:
1949年2月14日生

学歴・職歴

1973年3月:
神奈川歯科大学歯学部卒業
1973年5月:
千葉大学医学部歯科口腔外科学講座研修医
1985年10月:
文部教官千葉大学医学部 歯科口腔外科学講座 講師
1988年1月:
獨協医科大学 口腔外科学講座 講師
1991年~1992年:
アメリカ合衆国北カロライナ大学歯学部 客員研究員
1995年7月:
獨協医科大学 口腔外科学講座 助教授
2001年:
アメリカ合衆国UCLA校歯学部客員研究員
2003年4月:
獨協医科大学口腔外科学講座 主任教授
2014年3月:
獨協医科大学定年退職
2014年4月~:
獨協医科大学 名誉教授・医学部特任教授

タイトル

学位(医学博士・千葉大学)
日本口腔外科学会認定医(認定医登録番号269)
日本口腔外科学会指導医(指導医登録番号258)
臨床修練指導歯科医(厚生省登録番号166)
日本顎顔面インプラント学会指導医(指導医登録番号7)
がん治療暫定教育医(歯科口腔外科)
日本小児口腔外科学会指導医(指導医登録番号38)
日本有病者歯科医療学会指導医・認定医(指導医・認定医登録番号0001)
日本口腔腫瘍学会暫定口腔がん指導医

社会活動・役職

(一社)日本歯科専門医機構理事長
(一社)日本歯学系学会協議会 副理事長
(一社)日本有病者歯科医療学会 理事長
日本歯科医学会 理事
(NPO) 日本・アジア健康科学支援機構 理事長
(財団) 獨協国際学術交流基金 監事
歯学系学会社会保険委員会連合 監事
(公社)日本口腔外科学会 名誉会員
(NPO)日本口腔科学会 名誉会員

病院における歯科の役割とは、「歯科医療とは何か?」を問われている極めて重いものである。そこで、わが国における歯科のこれまでの経緯を振り返りながら、本課題について思料したいと思う。

わが国における歯科は、明治維新以前は口中科を専業にする医師が口、喉、歯の治療を行い、明治となり1874(明治7)年医制が公布され、1875年小幡英之助が「歯科を専攻する医師」として登録されている。つまり、歯科は医科の一分野として存在していたのである。一方、1839年米国ボルチモアで歯科医学校が創立され、医科の一分科であった歯科が分離し、アメリカ特有の歯科医療技術を発展させてきた。このアメリカ学派の歯科は、留学生であった小幡らによりわが国に伝えられ、歯科を医科から分離すべきかの論争を起こし、遂には1906年「歯科医師法」が制定され、歯科は医科とは別の道を歩むことになる、わが国の歯科の原点となったものである。戦前の歯学教育は専門学校で行われ、原則として歯およびその周囲組織に対象が限られていた職業教育であった。第二次世界大戦後、学制改革により新制の歯科大学となり、口腔機能の観点から歯科医療を考えるようになり戦前の職業教育からの脱皮が図られた。その後、わが国の経済発展に伴い社会は多様化し、医科では医療の機能分化が進められ、歯科においては専門化が進み教育の現場に取り入れられたが、残念ながら歯科医療としての対応はなかった。

このような中、歯科では歯科病院或いは医科病院歯科(口腔外科)のみが医療の機能分化に模した形態で、2次、3次歯科医療の役割が課せられ、特に歯科大学がない地方では病院歯科は高度歯科医療の担い手、或いは研修の場として重要な役割を果たしている。一方、診療領域の問題、機能分化に即した歯科医療の提供ができない歯科医師の存在、そして診療報酬上の不利益等の問題より、医科病院歯科は減少の途を辿っている。
そして今、社会環境の急激な変化が進み、また、全身に対する口腔の健康の位置づけが明確になる中、歯科医療の在り方についてもパラダイムの変換が求められている。われわれは社会の要請に責務を果たすことは当然であり、病院歯科がその担い手となることに異存はない。その上で、歯科全体を俯瞰し、歯科における専門性の必要性や地域の特殊性も勘案したうえで、医科病院における包括的口腔健康管理はどうあるべきかを論じるべきであると思われた。