[認定P-02] 姿勢調整によって嚥下障害の改善を認めた1症例
【緒言】
日常の食事場面では、「体がずり落ちる」「顎が上がったまま」など、不適切な姿勢のまま食事が提供されている症例にしばしば遭遇する。これにより誤嚥、誤嚥性肺炎、栄養不良等を引き起こす可能性がある。今回、姿勢調整によって嚥下障害の改善を認めた症例を経験したので報告する。
【症例】
76歳女性。既往歴に平成27年:胃潰瘍、平成30年:アテローム血栓性脳梗塞を発症。誤嚥性肺炎は無し。令和2年10月に施設に入居。施設から食事中のむせ込みと左口角からの食べこぼしを主訴に依頼された。初診時、身長155㎝、体重35㎏、円背、左片麻痺を認めた。食事の時は車椅子を利用し、正面観は左に傾斜、側面観は骨盤の後傾および頸部突出を認めた。また足底接地を認めなかった。口腔内は、やや口腔清掃不良および左側下顎臼歯部4歯欠損を認め、義歯を使用していなかった。
食事は自力摂取が可能。食事形態は全粥とろみ、ソフト食およびとろみ付き水分。一口量が多く、食事スピードも速いため食事時間は30分程度。1食分の9割程度口腔内に入るも、左口角からの食べこぼしが多いため実際の摂取量は5割程度。またむせ込みを認めた。姿勢調整を行う前にVE検査を実施したところ、全粥とろみ、ソフト食共に嚥下反射の惹起遅延を認め、全粥とろみでは誤嚥と仮声帯部に残留を認めた。ソフト食では誤嚥と残留を認めなかった。食事の摂取不足と誤嚥が、円背と片麻痺の影響によるものと考え、食事形態は変更せず、クッション類を用いて姿勢調整を行い、食事スピード、一口量に関しては声掛け、見守り介助を実施した。
本報告の発表について代諾者から文書による同意を得ている。
【経過】
治療開始1ヶ月後の12月に再評価を行ったところ、左口角からの食べこぼしおよびむせ込みは減少した。また体重は1㎏増加した。VE検査では喉頭侵入は認めなかった。
【考察】
円背や傾斜が生じている高齢者の方では、摂食嚥下活動が制約を受けている。骨盤体が後傾し後方重心になり、バランスをとるために頸部突出する。つまり舌骨下筋群にストレッチが加わり、喉頭を挙上させるために必要な舌骨上筋群の作用を抑制させる。これに対しクッション類を利用し姿勢調整を行うことで、骨盤の後傾を改善させ、腰背部を伸展方向に対して起す事で頸部突出を抑制し、喉頭や咽頭の位置が適切な関係になり、誤嚥や左口角からの食べこぼしが減少したと考える。
日常の食事場面では、「体がずり落ちる」「顎が上がったまま」など、不適切な姿勢のまま食事が提供されている症例にしばしば遭遇する。これにより誤嚥、誤嚥性肺炎、栄養不良等を引き起こす可能性がある。今回、姿勢調整によって嚥下障害の改善を認めた症例を経験したので報告する。
【症例】
76歳女性。既往歴に平成27年:胃潰瘍、平成30年:アテローム血栓性脳梗塞を発症。誤嚥性肺炎は無し。令和2年10月に施設に入居。施設から食事中のむせ込みと左口角からの食べこぼしを主訴に依頼された。初診時、身長155㎝、体重35㎏、円背、左片麻痺を認めた。食事の時は車椅子を利用し、正面観は左に傾斜、側面観は骨盤の後傾および頸部突出を認めた。また足底接地を認めなかった。口腔内は、やや口腔清掃不良および左側下顎臼歯部4歯欠損を認め、義歯を使用していなかった。
食事は自力摂取が可能。食事形態は全粥とろみ、ソフト食およびとろみ付き水分。一口量が多く、食事スピードも速いため食事時間は30分程度。1食分の9割程度口腔内に入るも、左口角からの食べこぼしが多いため実際の摂取量は5割程度。またむせ込みを認めた。姿勢調整を行う前にVE検査を実施したところ、全粥とろみ、ソフト食共に嚥下反射の惹起遅延を認め、全粥とろみでは誤嚥と仮声帯部に残留を認めた。ソフト食では誤嚥と残留を認めなかった。食事の摂取不足と誤嚥が、円背と片麻痺の影響によるものと考え、食事形態は変更せず、クッション類を用いて姿勢調整を行い、食事スピード、一口量に関しては声掛け、見守り介助を実施した。
本報告の発表について代諾者から文書による同意を得ている。
【経過】
治療開始1ヶ月後の12月に再評価を行ったところ、左口角からの食べこぼしおよびむせ込みは減少した。また体重は1㎏増加した。VE検査では喉頭侵入は認めなかった。
【考察】
円背や傾斜が生じている高齢者の方では、摂食嚥下活動が制約を受けている。骨盤体が後傾し後方重心になり、バランスをとるために頸部突出する。つまり舌骨下筋群にストレッチが加わり、喉頭を挙上させるために必要な舌骨上筋群の作用を抑制させる。これに対しクッション類を利用し姿勢調整を行うことで、骨盤の後傾を改善させ、腰背部を伸展方向に対して起す事で頸部突出を抑制し、喉頭や咽頭の位置が適切な関係になり、誤嚥や左口角からの食べこぼしが減少したと考える。