一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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認定医審査ポスター

2021年6月11日(金) 14:30 〜 16:30 認定医Line1 (Zoom)

[認定P-03] 重度認知症患者に干渉波感覚刺激を行い、嚥下機能が改善した一例

○原 良子1、中根 綾子1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【緒言】

口腔期の機能低下により舌接触補助床を作成後、送り込みが一時的に改善した患者が、脳梗塞の発症で嚥下機能が更に低下したが、干渉波感覚刺激により、嚥下機能の改善に至った症例を経験したので報告する。



【症例】

アルツハイマー型認知症の84歳男性。既往歴は脳出血。2013年より介護老人保健施設に入所。口腔清掃及び義歯修理を主訴に2015年4月に訪問歯科を受診した。初診時の評価は改訂長谷川式簡易知能評価3点、バーセルインデックス0点、要介護5、ボディマス指数21.2 kg/m 2であった。その後、脳梗塞を発症したため干渉波感覚刺激を施行した。 

なお,本報告の発表について代諾者から文書による同意を得ている。



【経過】

初診時、食事は介助で全粥刻み食を摂取していたが、義歯修理後一口大に食事形態の変更を行った。初診時より2年半経過後、オーラルディスキネジアが発現し、頸部は後屈して拘縮したため姿勢調整を行った。3年後には痰がらみを認めるようになり咳嗽訓練を指導した。同時期より送り込みが悪化し口腔内残留が増加したため、食事形態を全粥刻み食と水分は中間のとろみに変更、交互嚥下を指示した。また舌接触補助床を作成し、口腔内残留が一時的に消失した。その後脳梗塞を発症し、身体は右に傾き、覚醒にムラを認め、喉頭挙上量が減少した。脳梗塞発症から半年後、通常の生活下で頸部に干渉波感覚刺激を2回/日×15分、5回/週×3週間、刺激強度2~3mAで施行した。咳テスト(1%クエン酸生理食塩水溶液)による前後比較を行ったところ、咳誘発時間は60秒→4秒、咳回数は0回→5回に改善、また経口摂取レベルは機能的経口摂取評価4で変化はなかったが、経口摂取カロリーは1400kcal→1600kcalと改善した。



【結果と考察】

義歯修理により咬合を回復し、咀嚼機能を回復させたことで食事形態を一時的に変更できた。その後認知症の進行や脳梗塞の発現による摂食嚥下機能の低下を認めたが、干渉波感覚刺激により咳反射と栄養状態が改善した。介入困難である認知症にリハビリテーションを実施し、嚥下機能が改善した意味は大きいと考える。





◆東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会 承認番号 第D2018-005番