[認定P-04] パーキンソン病の診断時にすでに重度嚥下障害を呈していた症例
【目的】
パーキンソン病(以下,PD)患者は初期から嚥下障害が出現し,病気の進行に伴い嚥下障害の重症度が増す.嚥下障害は運動障害の一症状として出現するが,投薬治療により改善することも多く,脳神経内科医による診断と治療が患者のQOLに関わる.今回,医科・歯科の外来に通院していたもののPDの診断に至らず,診断時にはすでに重度嚥下障害を呈していた症例を経験したため報告する.
【症例の概要と処置】
79歳PDの男性.X年11月,「食事に時間がかかる.むせる」ことを主訴に当部外来を受診した.X-2年から歩行障害の訴えで某病院フレイル外来に通院し,筋力低下の指摘のみで経過観察となっていたが,当部受診前に脳神経内科を受診しPD(Hoehn&YahrⅢ度)と診断され投薬治療が開始された.また,その間も定期的に歯科に通院していた.当部での嚥下内視鏡検査にて,食塊形成は良好であるものの水分の不顕性誤嚥を認め,同日の簡易CRP検査は2.2mg/dLであった.誤嚥による呼吸器の炎症を疑い,水分誤嚥の予防として増粘剤の使用を指導した.また,食事と水分が十分摂取できず大幅な体重減少(X年8月54kg→X年11月49.5 kg)を認めたため,栄養剤の使用について指導した.レボドパの服用直後は「飲み込みやすい」との訴えを聴取したため,嚥下障害についても投薬コントロールにより改善する可能性があると判断し,脳神経内科主治医へ嚥下所見を報告,さらなる投薬量の調整と投薬治療の継続を依頼した.
【結果と考察】
X+1年1月,誤嚥性肺炎を生じることなく経過している.食事中のむせが残存し,水分への増粘剤の使用が徹底されていなかったため,再度指導を行った.今後も嚥下機能の経過をみながら,脳神経内科主治医と連携を取って治療にあたる予定である.本症例は数年前から易転倒性があり,寡動や姿勢反射障害などのパーキンソン症状が出現していたが,フレイル外来や歯科では気づかれることなく,脳神経内科および当部初診時にはすでにHoehn&YahrⅢ度,重度嚥下障害を認めた.早期にPDに対する治療が開始されていれば,より早い段階から嚥下指導が可能となり,安全に経口摂取を継続できていた可能性がある.歯科においても未診断の症状を見逃さないようにすることの重要性が示唆された.
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている.
パーキンソン病(以下,PD)患者は初期から嚥下障害が出現し,病気の進行に伴い嚥下障害の重症度が増す.嚥下障害は運動障害の一症状として出現するが,投薬治療により改善することも多く,脳神経内科医による診断と治療が患者のQOLに関わる.今回,医科・歯科の外来に通院していたもののPDの診断に至らず,診断時にはすでに重度嚥下障害を呈していた症例を経験したため報告する.
【症例の概要と処置】
79歳PDの男性.X年11月,「食事に時間がかかる.むせる」ことを主訴に当部外来を受診した.X-2年から歩行障害の訴えで某病院フレイル外来に通院し,筋力低下の指摘のみで経過観察となっていたが,当部受診前に脳神経内科を受診しPD(Hoehn&YahrⅢ度)と診断され投薬治療が開始された.また,その間も定期的に歯科に通院していた.当部での嚥下内視鏡検査にて,食塊形成は良好であるものの水分の不顕性誤嚥を認め,同日の簡易CRP検査は2.2mg/dLであった.誤嚥による呼吸器の炎症を疑い,水分誤嚥の予防として増粘剤の使用を指導した.また,食事と水分が十分摂取できず大幅な体重減少(X年8月54kg→X年11月49.5 kg)を認めたため,栄養剤の使用について指導した.レボドパの服用直後は「飲み込みやすい」との訴えを聴取したため,嚥下障害についても投薬コントロールにより改善する可能性があると判断し,脳神経内科主治医へ嚥下所見を報告,さらなる投薬量の調整と投薬治療の継続を依頼した.
【結果と考察】
X+1年1月,誤嚥性肺炎を生じることなく経過している.食事中のむせが残存し,水分への増粘剤の使用が徹底されていなかったため,再度指導を行った.今後も嚥下機能の経過をみながら,脳神経内科主治医と連携を取って治療にあたる予定である.本症例は数年前から易転倒性があり,寡動や姿勢反射障害などのパーキンソン症状が出現していたが,フレイル外来や歯科では気づかれることなく,脳神経内科および当部初診時にはすでにHoehn&YahrⅢ度,重度嚥下障害を認めた.早期にPDに対する治療が開始されていれば,より早い段階から嚥下指導が可能となり,安全に経口摂取を継続できていた可能性がある.歯科においても未診断の症状を見逃さないようにすることの重要性が示唆された.
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている.