一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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認定医審査ポスター

2021年6月11日(金) 14:30 〜 16:30 認定医Line1 (Zoom)

[認定P-05] 胃瘻造設患者の胃食道逆流への対処に苦慮した一症例

○緒方 真弓1,2、石田 瞭3 (1. 緒方歯科医院、2. 東京歯科大学千葉歯科医療センター、3. 東京歯科大学)

【緒言】
  嚥下障害で経口摂取が困難となった時、別の栄養ルートとして胃瘻造設を選択される場合があるが、造設後のトラブルの
  一つに胃道逆流がある。長期に渡る胃瘻による栄養摂取の中で胃食道逆流が深刻となり、増粘剤の使用など様々に対処し 
  たが、結果的に逆流をを解決する事が出来なかった一例を経験したので報告する。
【症例】
  74歳女性 クモ膜下出血後遺症により寝たきりで、施設入所、既に胃瘻造設されていた。意思の疎通はほぼ不可で、口
  腔内は残存歯多数あり、歯周炎、齲蝕が認められた。介護者から口臭があるとの事で口腔衛生管理を依頼され、訪問歯科
  診療を開始した。その後、家族と施設スタッフの強い希望により,経口摂取を目的として摂食機能療法を行う事になった。
  なお、本報告の発表について患者代諾者から文書による同意を得ている。
【経過】
  X年9月の初診から約5年間は歯周炎治療、齲蝕治療、口腔ケアを行っていた。その後、経口摂取の希望があり、嚥下専 
  問歯科医師と連携してVEによる嚥下評価を行いながら、お楽しみ程度の経口摂取訓練を開始した。同時に残された嚥下機
  能維持の為に間接訓練も行った。当初はVE評価にて咽頭残留は認められたが明らかな誤嚥は確認されなかった。さらに1
  年後、VEにて栄養剤の逆流と検査食の誤嚥も確認された。その後3年間は、逆流と咽頭残留は徐々にではあるが憎悪して
  いった。そこで増粘剤REF-P1を提案し、使用を試みた。REF-P1が栄養剤をカバーして逆流を防いでくれる事を想定し 
  たのである。使用後半年程は栄養剤の逆流は見られず、口腔内に貯留したり口腔外に流出する事も無く経過していたが、
  今度は口腔内に白い沈澱物と歯面のべた付きが現れREF-P1の逆流と判断した。REF-P1は粘着性のため、気道閉塞を危
  惧し使用を中止した。その後主治医の指示により半固型栄養剤に変更したが、逆流は憎悪し、最期を迎えられた。
【考察】
  胃瘻造設している患者にとって、食べる楽しみを経験できる事は大切であり、お楽しみ程度の経口摂取であっても患者の
  QOLは格段に改善すると言える。しかし患者の状態によっては、胃食道逆流そして誤嚥性肺炎を引き起こすこともある。
  在宅に関わる口腔健康管理をつかさどる歯科医師として、経腸栄養の逆流のメカニズムや原因を知り、主治医と連携を取
  りながら対処する事の重要性を教えてくれた症例であった。