The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター

Fri. Jun 11, 2021 2:30 PM - 4:30 PM 認定医Line1 (Zoom)

[認定P-06] 抗精神病薬の長期内服で嚥下機能が低下し、胃瘻造設に至った統合失調症患者の経口摂取支援

○奥村 拓真1、戸原 玄1 (1. 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科医歯学専攻 老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【目的】

 統合失調症において不穏やせん妄、幻視といった症状に対し、抗精神病薬が投与される。一方で抗精神病薬の副作用として嚥下障害が生じる可能性も報告されている。今回抗精神病薬の長期投与よる嚥下障害が疑われ、誤嚥性肺炎に至ったのちに抗精神病薬を中止した統合失調症患者に対し、経口摂取再開まで支援を行った症例を経験したので報告する。

【症例】

72歳、女性。飲み込みづらさを主訴にX年10月より訪問診療を開始した。既往歴は統合失調症、糖尿病であった。統合失調症に対しパリペリドン徐放錠(インヴェガ錠3㎎®)1日1回朝食後と夜間せん妄時にリスペリドン内服薬(リスペリドン内用液0.5mg分包®)が屯用で処方されていた。身体所見としてBMI16.6とるい痩を認め、握力10㎏程度で筋力低下、また動作緩慢で活動性は低下していた。嚥下内視鏡検査にて誤嚥を認め、抗精神病薬の長期内服による嚥下機能障害を疑った。なお本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。

【経過】

精神科担当医に現状を報告し、抗精神病薬の変更や調整を打診したが、統合失調症の病状のため困難であった。その後も体重やADLが低下し、X+1年9月再評価時にはさらなる嚥下機能低下を認めたため、抗精神病薬の服薬調整や経管栄養の使用検討を再度精神科主治医に打診していた。家族・担当介護支援専門員に現状や今後予想される状況や経管栄養の適応について説明していた。最終的にX+2年4月に誤嚥性肺炎発症、胃瘻造設となった。それを機に抗精神病薬は全て中止となり、以降精神科担当医から基本的に嚥下機能低下をきたす薬剤は避けて治療するという協力を得られることとなった。退院後体重も増加、活動性も回復したため嚥下機能訓練を開始し、現在は直接訓練まで至っている。

 【考察】

 抗精神病薬はドパミン受容体に作用し、錐体外路症状などを出現させることがあり、嚥下機能に影響を及ぼすことが報告されている。今回抗精神病薬の長期内服により嚥下障害が引き起こされた症例を経験した。嚥下障害の重症度から抗精神病薬の服薬調整が必須であり、情報を共有することで最終的に精神科担当医の協力も得られ、経口摂取支援を再開できた。また患者や家族には事前に現状と今後想定しうる状況について説明を十分に行うことで、心理的な支援にもつながったと考える。今後も経口摂取の支援を継続していく予定である。