一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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認定医審査ポスター

2021年6月11日(金) 14:30 〜 16:30 認定医Line1 (Zoom)

[認定P-07] 口腔機能低下症に対し栄養指導と機能訓練を行った一例

○後藤 由和1、両角 祐子2 (1. 日本歯科大学新潟病院 訪問歯科口腔ケア科、2. 日本歯科大学新潟生命歯学部 歯周病学講座)

【緒言】

口腔機能低下症は様々な要因に修飾され、複雑な病態を呈することが多く、多面的にアプローチすることが必要である。一般的に低栄養も口腔機能を低下させるリスク要因と考えられている。今回、口腔機能低下症患者に歯科治療や口腔機能訓練と併せて、管理栄養士による栄養指導を行い栄養状態の改善を図った症例を経験したので報告する。

【症例】

68歳、女性。食べこぼしを主訴に来院。既往歴は胃潰瘍のみ。2年前より食事の際の食べこぼしや会話中の流涎を自覚し当院を受診。残存歯は25本でEichnerの分類はB1。上顎に部分床義歯装着し、適合に問題なし。下顎左側臼歯部に著しい動揺があり、咀嚼時疼痛を認める。口腔機能検査を行い、口腔衛生状態はTCIが80%・舌口唇運動機能はpaが6.4回/秒、taが6.0回/秒、kaが5.6回/秒・舌圧は7.93kPa・咀嚼能力が49㎎/dl・嚥下機能はEAT-10が7点と5項目で機能低下を認め、口腔機能低下症と診断した。BMIは15.4であった。食形態は常食、摂取量は少なく、平均で1日1000kcal程度の摂取であった。

なお、本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。

【経過】

口腔機能低下症と診断し、口唇や舌の可動域訓練・筋力向上訓練などを開始した。動揺歯の抜歯と義歯新製と共に、管理栄養士による栄養アセスメントにて身長・体重、普段の食事内容からカロリー計算を行い、体重増加を目標とし、現在の摂取カロリーに200Kcal追加するよう、たんぱく質を中心に食事指導を行った。指導後、半年でBMIが15.4から16.6と改善を認めると共に、口腔機能も初診時と比較し舌圧が7.9kPaから14.3kPa、咀嚼能力が49㎎/dLから90㎎/dLと改善したが、主訴の食べこぼしについては改善に至らなかった。食べこぼしの原因を探るため、摂食時の評価を行い、早食い・頬の協調運動の不良を認めたため、指導を行った。

【考察】
本症例では口腔機能の改善に必要な歯科治療を行うと共に、口腔機能訓練、栄養指導を行った。管理栄養士と共に低栄養に対し栄養指導を行うことで、機能訓練の効果をさらに高めることができたと考えられた。高齢者の口腔機能低下症に対しては、筋機能訓練のみでは効果が得られにくい事が知られており、口腔機能訓練だけでなく栄養管理や栄養指導も併せて行う事が重要であると考えられる。