[認定P-08] 顎関節骨折をきっかけにサルコペニアによる摂食嚥下障害が顕在化した一例
【緒言】
サルコペニアの摂食嚥下障害では早期診断、早期リハビリテーションによる介入が求められている。今回サルコペニアの嚥下障害が疑われた患者に対し、摂食嚥下リハビリテーションを行い、経過を観察した。
【症例】
90代、女性。食事時のむせこみを主訴に来院した。初診より半年前にベッドから転落しオトガイ部を強打したことで左右顎関節頭を骨折した。過去に嚥下障害に関連する既往はなく、その後も常食を摂取していたが顎の変位により咀嚼の困難感、舌の動かしにくさを感じ、食事量が減少した。2ヶ月前には食事中のむせも認め始めた。口腔内は上顎で部分床義歯、下顎は総義歯を使用していた。咀嚼は緩慢な様子を認め食塊形成は不良であった。舌圧は7.9kPaであり、嚥下造影検査にて安静時咽頭腔は広く、とろみなし水分では嚥下反射惹起遅延、喉頭侵入を認めた。寒天は少量咽頭残留を認めた。体重は47.9kg、握力は12.1kg、SMIは4.97kg/m2であった。本報告の発表について患者本人から文書による同意を得た。
【経過】
初診時、サルコペニアに加え顎関節頭の骨折により顕在化した摂食嚥下障害と診断し、咽頭感覚の低下も認めたため、間接訓練として舌抵抗訓練、発音訓練を行い、食事は歯ぐきでつぶせる程度の硬さのものへ変更し、水分には薄いとろみを付与するよう指導した。1~2ヶ月毎に口腔機能の評価、半年毎に嚥下造影検査を行い、評価の内容に合わせて訓練強度も変更した。4ヶ月後、食事中のむせこみが減少した。食事量も全量摂取できていたが、食事時間の延長がみられ始めた。そのため、食事時間の短縮を目的に食事量を半分にし、不足分の栄養を補食で補うよう指導した。1年後、体重は50.9kgと増加し、舌圧も20.8kPaまで改善を認めた。嚥下造影検査では、食塊形成は依然として不良なものの、安静時の咽頭腔は初診時と比べ縮小がみられ、寒天の残留量も減少していた。その後、徐々にSMI、舌圧の低下を認め、初診から24か月後、外来受診困難となり介入終了となった。
【考察】
間接訓練、栄養量の確保によりサルコペニアの嚥下障害と思われる症状の改善がみられた。しかし、摂食状況に大きな変化はなかったが、徐々にサルコペニアは重症化した。超高齢者におけるサルコペニアが原因と思われる摂食嚥下障害の治療に苦渋した。
サルコペニアの摂食嚥下障害では早期診断、早期リハビリテーションによる介入が求められている。今回サルコペニアの嚥下障害が疑われた患者に対し、摂食嚥下リハビリテーションを行い、経過を観察した。
【症例】
90代、女性。食事時のむせこみを主訴に来院した。初診より半年前にベッドから転落しオトガイ部を強打したことで左右顎関節頭を骨折した。過去に嚥下障害に関連する既往はなく、その後も常食を摂取していたが顎の変位により咀嚼の困難感、舌の動かしにくさを感じ、食事量が減少した。2ヶ月前には食事中のむせも認め始めた。口腔内は上顎で部分床義歯、下顎は総義歯を使用していた。咀嚼は緩慢な様子を認め食塊形成は不良であった。舌圧は7.9kPaであり、嚥下造影検査にて安静時咽頭腔は広く、とろみなし水分では嚥下反射惹起遅延、喉頭侵入を認めた。寒天は少量咽頭残留を認めた。体重は47.9kg、握力は12.1kg、SMIは4.97kg/m2であった。本報告の発表について患者本人から文書による同意を得た。
【経過】
初診時、サルコペニアに加え顎関節頭の骨折により顕在化した摂食嚥下障害と診断し、咽頭感覚の低下も認めたため、間接訓練として舌抵抗訓練、発音訓練を行い、食事は歯ぐきでつぶせる程度の硬さのものへ変更し、水分には薄いとろみを付与するよう指導した。1~2ヶ月毎に口腔機能の評価、半年毎に嚥下造影検査を行い、評価の内容に合わせて訓練強度も変更した。4ヶ月後、食事中のむせこみが減少した。食事量も全量摂取できていたが、食事時間の延長がみられ始めた。そのため、食事時間の短縮を目的に食事量を半分にし、不足分の栄養を補食で補うよう指導した。1年後、体重は50.9kgと増加し、舌圧も20.8kPaまで改善を認めた。嚥下造影検査では、食塊形成は依然として不良なものの、安静時の咽頭腔は初診時と比べ縮小がみられ、寒天の残留量も減少していた。その後、徐々にSMI、舌圧の低下を認め、初診から24か月後、外来受診困難となり介入終了となった。
【考察】
間接訓練、栄養量の確保によりサルコペニアの嚥下障害と思われる症状の改善がみられた。しかし、摂食状況に大きな変化はなかったが、徐々にサルコペニアは重症化した。超高齢者におけるサルコペニアが原因と思われる摂食嚥下障害の治療に苦渋した。