[認定P-12] 舌再建術後の患者に対して補綴処置を行い機能回復を図った1症例
【緒言】
舌癌による舌半側切除術,再建術を受けた患者では舌の器質的・機能的障害が生じることが多い。今回,舌半側切除,再建術後の患者に対して舌接触補助床の機能を付与した義歯を作製し摂食嚥下リハビリテーションを行うことで機能回復を図った1例を経験したので報告する。
【症例】
80歳 男性。2013年3月,舌縁部扁平上皮癌T2N0M0のため舌半側切除,予防的頸部郭清術および大腿皮弁による舌再建術を受けた。2014年5月に咀嚼がし辛いとの訴えがあり補綴科紹介。上下顎とも遊離端欠損で義歯は使用していなかった。既往歴に腎結石,白板症がある。食事は常食を全量摂取している。茶菓子のような甘味を好むため,カリエスリスクが高い。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【経過】
歯牙欠損による咀嚼障害と診断し,まずは通法通り上下顎部分義歯を作製した。義歯装着により咀嚼機能向上を自覚したが,嚥下時の疲労感と口腔内残存を訴えるようになった。そこで口腔機能検査を行ったところ,最大舌圧6.1kPa,オーラルディアドコキネシス(以下OD):pa 4.7回/秒 ta 1.3回/秒 ka 1.5回/秒で舌の機能低下を認めた。舌機能不全による口腔期の嚥下障害と診断し,2016年10月,上顎義歯に舌接触補助床の機能を付与し装着した。あわせて摂食嚥下リハビリテーションとして,舌の可動域訓練,抵抗訓練,発音訓練を行った。
2016年11月には義歯装着時の最大舌圧は8.6kPa,2017年8月には最大舌圧9.2kPa,ODは ta 2.1回/秒,ka 1.9回/秒と基準値以下ではあるが上昇傾向を認めた。食事には30分程度かかるが常食を全量摂取できており,Alb値4.1以上と低栄養を疑う所見はなかった。嚥下時の疲労感については自覚的に改善傾向を認めたが完全には消失しなかったため,舌の訓練は継続した。その後医科転院となり,遠方からの来院であったため歯科も近医を紹介。当院は終診となった。
【考察】
本症例では種々の検査を行うことにより嚥下障害が口腔期にある事を特定し,舌の機能不全による嚥下効率の低下,嚥下回数の増加に起因する嚥下時の疲労感が生じていると考えるに至った。PAPを装着することで口腔機能検査の結果が改善し一定の治療効果を得ることができたが,舌のリハビリテーションは機能維持のために継続して行う必要があると考えられた。
舌癌による舌半側切除術,再建術を受けた患者では舌の器質的・機能的障害が生じることが多い。今回,舌半側切除,再建術後の患者に対して舌接触補助床の機能を付与した義歯を作製し摂食嚥下リハビリテーションを行うことで機能回復を図った1例を経験したので報告する。
【症例】
80歳 男性。2013年3月,舌縁部扁平上皮癌T2N0M0のため舌半側切除,予防的頸部郭清術および大腿皮弁による舌再建術を受けた。2014年5月に咀嚼がし辛いとの訴えがあり補綴科紹介。上下顎とも遊離端欠損で義歯は使用していなかった。既往歴に腎結石,白板症がある。食事は常食を全量摂取している。茶菓子のような甘味を好むため,カリエスリスクが高い。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【経過】
歯牙欠損による咀嚼障害と診断し,まずは通法通り上下顎部分義歯を作製した。義歯装着により咀嚼機能向上を自覚したが,嚥下時の疲労感と口腔内残存を訴えるようになった。そこで口腔機能検査を行ったところ,最大舌圧6.1kPa,オーラルディアドコキネシス(以下OD):pa 4.7回/秒 ta 1.3回/秒 ka 1.5回/秒で舌の機能低下を認めた。舌機能不全による口腔期の嚥下障害と診断し,2016年10月,上顎義歯に舌接触補助床の機能を付与し装着した。あわせて摂食嚥下リハビリテーションとして,舌の可動域訓練,抵抗訓練,発音訓練を行った。
2016年11月には義歯装着時の最大舌圧は8.6kPa,2017年8月には最大舌圧9.2kPa,ODは ta 2.1回/秒,ka 1.9回/秒と基準値以下ではあるが上昇傾向を認めた。食事には30分程度かかるが常食を全量摂取できており,Alb値4.1以上と低栄養を疑う所見はなかった。嚥下時の疲労感については自覚的に改善傾向を認めたが完全には消失しなかったため,舌の訓練は継続した。その後医科転院となり,遠方からの来院であったため歯科も近医を紹介。当院は終診となった。
【考察】
本症例では種々の検査を行うことにより嚥下障害が口腔期にある事を特定し,舌の機能不全による嚥下効率の低下,嚥下回数の増加に起因する嚥下時の疲労感が生じていると考えるに至った。PAPを装着することで口腔機能検査の結果が改善し一定の治療効果を得ることができたが,舌のリハビリテーションは機能維持のために継続して行う必要があると考えられた。