一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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認定医審査ポスター

2021年6月11日(金) 14:30 〜 16:30 認定医Line2 (Zoom)

[認定P-13] 口腔機能低下症患者に対し口腔機能訓練と義歯調整を同時に行い機能改善を認めた一症例

○木山 賢歩1、髙橋 裕1 (1. 福岡歯科大学 咬合修復学講座 有床義歯学分野)

【緒言】

 2016年に日本老年歯科医学会が「口腔機能低下症」を提唱し、2018年に保険収載され広く認知されている。口腔機能の低下は口腔リテラシーの低下をきっかけに歯周病、う蝕により歯を喪失し、滑舌の低下、わずかのむせ・食べこぼし、噛めない食品増加という症状をへて口腔機能低下症となり口腔の機能障害に起因するとされている。口腔機能低下症患者に対し日常的に口腔機訓練を行うことで機能改善、維持を図ることができるとされている。今回、口腔機能低下症患者に口腔機能訓練、補綴的処置を行うことで機能改善を認めたため報告する。

【症例および処置経過】

 89歳女性。2019年3月に食べ物がまとまらない、飲み込みにくいとの主訴があり口腔機能精密検査を行った。検査結果から口腔乾燥25.3、残存歯16本、舌口唇運動機能低下/pa/,/ta/,/ka/6回/秒未満、舌圧18.2kPa、咀嚼機能32mg/dl、嚥下機能(EAT-10)23点の6項目が該当し口腔機能低下症と診断した。症状から口腔乾燥、舌圧、舌口唇運動機能の低下による食塊の形成及び送り込み障害、義歯不適合による咀嚼障害が疑われた。口腔機能訓練、義歯調整を行い機能の回復を図ることとした。口腔機能訓練は間接訓練を中心に行い、直接訓練は交互嚥下訓練を食事中に行うように指導した。義歯調整を咬合面再形成、リライン、クラスプ修理で行った。
 なお本症例の発表について患者本人から文章による同意を得ている。

【結果と考察】

 月1回来院し問診にて食形態、むせの頻度等を確認し機能訓練が無理なく行えているか確認を行った。6か月後に再検査を行ったところ、咬合力315.9N、舌口唇運動機能/ta/6回/秒未満、舌圧17.9kPaの3項目が該当し口腔機能低下症と診断されたが、口腔乾燥31.4、咀嚼能率196㎎/dl、舌口唇運動機能/pa/6.2、/ka/8.2、嚥下機能1点と機能改善を認めた。1年6か月後に、再度検査を行い舌口唇運動機能/pa/、/ta/6回/秒未満、舌圧20.5kPaと該当項目が2つとなり口腔機能の回復を認めた。本症例では、口腔機能低下症の患者に対し口腔機能訓練と義歯調整を同時に行い、機能の改善を認めた。これは、口腔機能精密検査により改善が必要な項目を把握できた事、患者が口腔機能訓練を継続して行ったことに起因していると考えられる。