[認定P-19] 骨吸収抑制薬関連顎骨壊死を発症した要介護高齢者に対し訪問歯科診療にて義歯を作製した症例
【緒言】
我が国において,2018年に乳癌で死亡した女性はおよそ1.5万人である。また,乳癌は骨転移の頻度が高く,治療に骨吸収抑制薬が用いられることが多いが,近年,その副作用にて顎骨壊死を呈することが報告されている。今回,骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)による腐骨形成を伴う患者に対して大学病院専門外来と連携して訪問歯科診療にて義歯を作製し,良好な経過を得た一例を経験したので報告する。
【症例】
69歳 女性(初診時)。身長156㎝,体重46.6㎏,ADLは自立(要介護2)。
主 訴:中断していた歯科治療を訪問歯科診療で再開したい。
既往歴:乳癌術後再発,多発性骨転移と診断され,近医にて2016年6月から12月までデノスマブ120mgを皮下注にて月1回投与を受けていた。
現病歴:2016年7月,近医歯科にて└5, 41┬124を抜歯,上下義歯を修理した。同年11月,患者を担当しているケアマネージャーより継続的な通院が困難なため自宅への訪問歯科診療を依頼され,開始した。同年12月,┌3456相当部周囲歯肉に発赤・排膿を認め,義歯調整・歯周処置及び消炎処置を行ったが改善されず,2017年1月,精査加療目的で福岡歯科大学医科歯科総合病院口腔外科(以後,福歯大口腔外科と略す)を紹介受診した。
【経過】
2017年1月,福歯大口腔外科外来にてARONJの診断のもと,消炎を目的に左側下顎骨の腐骨を開放創とした。その後,週1回の訪問歯科診療と月1回の福歯大口腔外科受診を並行して義歯調整と消炎処置を継続した。同年5月,急性症状の消退を認めたため,6月に露出した腐骨をリリーフする形態で下顎義歯を新製した。8月,腐骨が分離したため,9月に福歯大口腔外科入院下で腐骨除去術を実施した。退院後も訪問歯科診療を続け,2018年5月,下顎義歯をリライニングして更なる適合改善をはかった。その結果,以前より咬み応えのある食事が摂取可能となり,2019年2月に体重が48.5㎏まで増加しADL(2020年3月より要支援1)は改善された。
【考察】
ARONJを伴う要介護高齢者に対し,地域歯科医院による訪問歯科診療と大学病院の専門外来との連携を取ることで,義歯作製および腐骨除去は可能であった。適切な病診連携により要介護高齢者のQOLを維持できることが示唆された。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
我が国において,2018年に乳癌で死亡した女性はおよそ1.5万人である。また,乳癌は骨転移の頻度が高く,治療に骨吸収抑制薬が用いられることが多いが,近年,その副作用にて顎骨壊死を呈することが報告されている。今回,骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)による腐骨形成を伴う患者に対して大学病院専門外来と連携して訪問歯科診療にて義歯を作製し,良好な経過を得た一例を経験したので報告する。
【症例】
69歳 女性(初診時)。身長156㎝,体重46.6㎏,ADLは自立(要介護2)。
主 訴:中断していた歯科治療を訪問歯科診療で再開したい。
既往歴:乳癌術後再発,多発性骨転移と診断され,近医にて2016年6月から12月までデノスマブ120mgを皮下注にて月1回投与を受けていた。
現病歴:2016年7月,近医歯科にて└5, 41┬124を抜歯,上下義歯を修理した。同年11月,患者を担当しているケアマネージャーより継続的な通院が困難なため自宅への訪問歯科診療を依頼され,開始した。同年12月,┌3456相当部周囲歯肉に発赤・排膿を認め,義歯調整・歯周処置及び消炎処置を行ったが改善されず,2017年1月,精査加療目的で福岡歯科大学医科歯科総合病院口腔外科(以後,福歯大口腔外科と略す)を紹介受診した。
【経過】
2017年1月,福歯大口腔外科外来にてARONJの診断のもと,消炎を目的に左側下顎骨の腐骨を開放創とした。その後,週1回の訪問歯科診療と月1回の福歯大口腔外科受診を並行して義歯調整と消炎処置を継続した。同年5月,急性症状の消退を認めたため,6月に露出した腐骨をリリーフする形態で下顎義歯を新製した。8月,腐骨が分離したため,9月に福歯大口腔外科入院下で腐骨除去術を実施した。退院後も訪問歯科診療を続け,2018年5月,下顎義歯をリライニングして更なる適合改善をはかった。その結果,以前より咬み応えのある食事が摂取可能となり,2019年2月に体重が48.5㎏まで増加しADL(2020年3月より要支援1)は改善された。
【考察】
ARONJを伴う要介護高齢者に対し,地域歯科医院による訪問歯科診療と大学病院の専門外来との連携を取ることで,義歯作製および腐骨除去は可能であった。適切な病診連携により要介護高齢者のQOLを維持できることが示唆された。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。