一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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認定医審査ポスター

2021年6月11日(金) 14:30 〜 16:30 認定医Line4 (Zoom)

[認定P-26] 薬剤関連顎骨壊死からの出血に対しICTを活用して対応した在宅療養患者の1例

○赤泊 圭太1、両角 祐子2 (1. 日本歯科大学新潟病院 訪問歯科口腔ケア科、2. 日本歯科大学新潟生命歯学部 歯周病学講座)

【目的】
 がん患者の薬剤関連顎骨壊死(以下MRONJ)は、全身状態や生命予後の観点から積極的治療が困難な場合が多く、特に在宅療養患者では、対応に苦慮することも少なくない。今回、MRONJからの出血に対し、ICT(情報通信技術)の活用が有効だった在宅療養症例を経験したので報告する。
【症例】
 67歳の女性。独居。要介護2で、認知機能低下はなし。ADLは歩行困難あり。原疾患の現病歴:2008年に乳癌の診断にて切除術施行。2016年に多発性骨転移の診断にてゾレドロン酸(ゾメタ®)の投与を開始。翌年デノスマブ(ランマーク®)へ変更。歯科現病歴:2019年7月、下顎右側第二大臼歯の自然脱落を契機に骨露出を認め、徐々に範囲が拡大し、精査加療目的に2020年6月当科紹介となる。現症:下顎右側犬歯から第二大臼歯にかけて広範囲に骨露出を認めた。下顎右側残存歯は動揺2度。下顎右側オトガイ神経領域に知覚異常は認めなかった。なお、本報告は患者本人から文書による同意を得ている。
【経過】
 初診時よりSWANネット(新潟市地域医療介護情報ネットワーク)へ参画し、日々タイムラインを確認、歯科は口腔内状況を発信した。2020年7月、トラスツズマブエムタンシン(以下T-DM1)単独療法が開始され、顎骨壊死部からの自然出血を生じた。8月、患者より出血の連絡が訪問看護師に入り、即日、主治医が採血を指示し、血液検査結果と口腔内の出血画像がタイムラインに掲載された。血小板数は5.6万/μlと減少を認め、当科にて訪問し、アルギン酸塩被覆材による止血を行った。10月、T-DM13クール施行後も出血が遷延したため、外来にて止血処置と画像検査を実施した。CTでは、皮質骨の連続性が保たれており、現時点で病的骨折のリスクは認めなかった。12月、T-DM1は中止となり、現在は出血なく経過している。
【考察】
 患者は独居の要介護高齢者で、出血は大きな不安を与え、時として生命を脅かす因子となる。原疾患治療に伴うリスクは、予め多職種間で共有することで、リスクの予測・回避に有益と考えられる。自験例では、主治医、訪問看護師、介護支援専門員らと共有ツールを使用し、連携したことで、血液検査所見、出血状況が把握でき、情報流通の高速化、迅速な対応に繋がったと考えられた。