[認定P-31] 訪問看護師との連携により在宅訪問診療にて経口摂取が可能となった一症例
【緒言】
在宅では訓練できる環境や人員が限られており,特に誤嚥リスクの高い患者では家族の介助による経口摂取は困難な場合がある。我々は訪問看護師と連携をはかり,在宅でもお楽しみ程度の経口摂取が可能となった一例を経験したので報告する。
【症例】
84歳男性,妻より家でも食べさせたいという主訴で訪問看護師から当科紹介となった。ラクナ梗塞で某リハビリテーション病院入院中に嚥下造影検査を実施し,重度嚥下障害と診断され胃瘻造設を行った。ST介助下でごく少量のペースト食を摂取していたが,退院後の在宅では高齢の妻と二人暮らしのため経口摂取はできず,胃瘻からの摂取のみであった。既往は,左放線冠ラクナ梗塞,陳旧性脳梗塞,両麻痺であり,要介護3であった。
初診時の口腔内衛生状態は不良で,歯周炎,齲蝕,上顎義歯不適合が認められた。嚥下スクリーニング検査ではRSST1回,MWSTは口腔内保持と送り込みができず評価困難であった。また,日常生活では頻繁に唾液をティッシュに出している状況であった。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【経過】
初診時の評価より,お楽しみ程度の経口摂取は長期目標として,まずは口腔衛生指導,間接訓練,味を楽しみながら実施できる味覚刺激による唾液嚥下訓練を計画した。しかし,妻は訓練の介入に消極的であったため,ケアマネージャーや訪問看護師と会議を行い,摂食嚥下リハビリテーションは訪問看護師と実施することで週2回以上介入することとした。次に,唾液嚥下の回数が増えた段階で嚥下内視鏡検査を実施した。スプーン1/2杯量の濃いとろみ水は送り込みに時間がかかるものの,下唇介助と追加嚥下で咽頭残留量が減少し,誤嚥は認められなかった。よって,同条件下にて1回あたり数口程度の飲水訓練を実施した。その後,誤嚥性肺炎を発症することなく摂取ペースの向上が認められたため,2回目の嚥下内視鏡検査を実施し,1回あたり30g程度のペースト食をお楽しみとして継続している。今後も機能の変化に注意して訓練内容を検討していく。
【考察】
今回は在宅でのニーズに応じて訪問看護師と訓練を協働するトランスディシプリナリーアプローチを実施した。誤嚥リスクの高い患者であったが,嚥下機能や全身状態に関する情報共有も行えるため安全にお楽しみの機会を作ることが可能となり,改めて連携の重要性を実感した症例であった。
在宅では訓練できる環境や人員が限られており,特に誤嚥リスクの高い患者では家族の介助による経口摂取は困難な場合がある。我々は訪問看護師と連携をはかり,在宅でもお楽しみ程度の経口摂取が可能となった一例を経験したので報告する。
【症例】
84歳男性,妻より家でも食べさせたいという主訴で訪問看護師から当科紹介となった。ラクナ梗塞で某リハビリテーション病院入院中に嚥下造影検査を実施し,重度嚥下障害と診断され胃瘻造設を行った。ST介助下でごく少量のペースト食を摂取していたが,退院後の在宅では高齢の妻と二人暮らしのため経口摂取はできず,胃瘻からの摂取のみであった。既往は,左放線冠ラクナ梗塞,陳旧性脳梗塞,両麻痺であり,要介護3であった。
初診時の口腔内衛生状態は不良で,歯周炎,齲蝕,上顎義歯不適合が認められた。嚥下スクリーニング検査ではRSST1回,MWSTは口腔内保持と送り込みができず評価困難であった。また,日常生活では頻繁に唾液をティッシュに出している状況であった。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【経過】
初診時の評価より,お楽しみ程度の経口摂取は長期目標として,まずは口腔衛生指導,間接訓練,味を楽しみながら実施できる味覚刺激による唾液嚥下訓練を計画した。しかし,妻は訓練の介入に消極的であったため,ケアマネージャーや訪問看護師と会議を行い,摂食嚥下リハビリテーションは訪問看護師と実施することで週2回以上介入することとした。次に,唾液嚥下の回数が増えた段階で嚥下内視鏡検査を実施した。スプーン1/2杯量の濃いとろみ水は送り込みに時間がかかるものの,下唇介助と追加嚥下で咽頭残留量が減少し,誤嚥は認められなかった。よって,同条件下にて1回あたり数口程度の飲水訓練を実施した。その後,誤嚥性肺炎を発症することなく摂取ペースの向上が認められたため,2回目の嚥下内視鏡検査を実施し,1回あたり30g程度のペースト食をお楽しみとして継続している。今後も機能の変化に注意して訓練内容を検討していく。
【考察】
今回は在宅でのニーズに応じて訪問看護師と訓練を協働するトランスディシプリナリーアプローチを実施した。誤嚥リスクの高い患者であったが,嚥下機能や全身状態に関する情報共有も行えるため安全にお楽しみの機会を作ることが可能となり,改めて連携の重要性を実感した症例であった。