[合同 3-1(歯)] 口腔乾燥感が身体的フレイルの発現に与える影響の検討 ―地域在住高齢者における5年間の縦断研究―
【目的】
近年、口腔機能と心身機能、生命予後との関連性が明らかとされてきている。高齢期に多くみとめられる口腔症状のひとつである口腔乾燥感は、全身疾患や服薬、うつ傾向等との関連が示されており、QOLにも影響を与えるとされているが、フレイルとの関連は十分検討されていない。そこで、本研究では、口腔乾燥感が身体的フレイル(以下、フレイル)の発現に与える影響を明らかにする目的で、来場型健診を受診した地域在住高齢者の5年間の縦断データを用いて検討を行った。
【対象および方法】
2014年に東京都I区において実施した来場型健診「板橋お達者健診」に参加した地域在住高齢者762名のうち、ベースライン(以下、BL)の2014年時点でフレイルに該当した者、データ欠損のある者、5年間の追跡期間に一度も調査に参加しなかった者を除いた、609名(男性245名、女性364名、平均年齢73.4±5.6歳)分のデータを分析対象とした。フレイルの評価には改訂日本版CHS基準を用い、5項目中3項目以上該当する場合にフレイルと定義した。口腔乾燥感の評価には、基本チェックリストに採用されている質問項目を用いた。Kaplan Meier法とLog-rank検定により、口腔乾燥感の有無によるフレイル発現の差異を比較した。さらにBL時の性別、年齢、全身疾患数、多剤服用の有無、うつ傾向、体格指数、アルブミン値、教育歴、喫煙習慣、現在歯数、機能歯数を共変量としたCox比例ハザード回帰分析を用いてハザード比を算出した。
【結果と考察】
追跡期間の平均値は3.4+1.3年であり、身体的フレイルの累積発現率は17.9%であった。Log-rank検定の結果、ベースラインにおいて口腔乾燥感がある群のフレイル発現率は26.5%であり、口腔乾燥がない群(14.7%)と比較して有意に高かった。共変量で調整したCox比例ハザードモデルでは、フレイル発現に対する口腔乾燥感のハザード比(95%信頼区間)は、1.56(1.02-2.38)であった。口腔乾燥感の自覚は、身体的フレイル発現と関連していたことから、将来のフレイルのリスクを高める因子であり、今後、地域におけるさらなる実態把握と口腔乾燥への対応が求められると考えられた。
東京都健康長寿医療センター研究部門倫理委員会 承認番号:R1-迅15、COIなし
近年、口腔機能と心身機能、生命予後との関連性が明らかとされてきている。高齢期に多くみとめられる口腔症状のひとつである口腔乾燥感は、全身疾患や服薬、うつ傾向等との関連が示されており、QOLにも影響を与えるとされているが、フレイルとの関連は十分検討されていない。そこで、本研究では、口腔乾燥感が身体的フレイル(以下、フレイル)の発現に与える影響を明らかにする目的で、来場型健診を受診した地域在住高齢者の5年間の縦断データを用いて検討を行った。
【対象および方法】
2014年に東京都I区において実施した来場型健診「板橋お達者健診」に参加した地域在住高齢者762名のうち、ベースライン(以下、BL)の2014年時点でフレイルに該当した者、データ欠損のある者、5年間の追跡期間に一度も調査に参加しなかった者を除いた、609名(男性245名、女性364名、平均年齢73.4±5.6歳)分のデータを分析対象とした。フレイルの評価には改訂日本版CHS基準を用い、5項目中3項目以上該当する場合にフレイルと定義した。口腔乾燥感の評価には、基本チェックリストに採用されている質問項目を用いた。Kaplan Meier法とLog-rank検定により、口腔乾燥感の有無によるフレイル発現の差異を比較した。さらにBL時の性別、年齢、全身疾患数、多剤服用の有無、うつ傾向、体格指数、アルブミン値、教育歴、喫煙習慣、現在歯数、機能歯数を共変量としたCox比例ハザード回帰分析を用いてハザード比を算出した。
【結果と考察】
追跡期間の平均値は3.4+1.3年であり、身体的フレイルの累積発現率は17.9%であった。Log-rank検定の結果、ベースラインにおいて口腔乾燥感がある群のフレイル発現率は26.5%であり、口腔乾燥がない群(14.7%)と比較して有意に高かった。共変量で調整したCox比例ハザードモデルでは、フレイル発現に対する口腔乾燥感のハザード比(95%信頼区間)は、1.56(1.02-2.38)であった。口腔乾燥感の自覚は、身体的フレイル発現と関連していたことから、将来のフレイルのリスクを高める因子であり、今後、地域におけるさらなる実態把握と口腔乾燥への対応が求められると考えられた。
東京都健康長寿医療センター研究部門倫理委員会 承認番号:R1-迅15、COIなし