The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

日本老年学会合同ポスターセッション

e-ポスター抄録 » 日本老年学会合同ポスターセッション

日本老年学会総会合同セッション

[合同 3-3(歯)] 口腔機能低下症とサルコペニアの関連の検討:The Otassha Study

○釘宮 嘉浩1,2、岩崎 正則2、小原 由紀2、本川 佳子2、枝広 あや子2、白部 麻樹2、渡邊 裕2,3、大渕 修一2、平野 浩彦2、上田 貴之1 (1. 東京歯科大学 老年歯科補綴学講座、2. 東京都健康長寿医療センター研究所、3. 北海道大学大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室)

【目的】

高齢期における口腔機能の低下は,健康状態の悪化につながることが明らかとなっている。口腔の機能が複合的に低下している疾患である口腔機能低下症も健康状態の悪化のリスクであると考えられるが,口腔機能低下症と全身疾患との関連の報告は少ない。口腔機能低下症と関連する全身疾患が明らかとなれば,口腔機能に限らず,全身状態も見据えたより適切な対応が可能となる。本研究では,口腔機能低下症と老年症候群のひとつであるサルコペニアが関連すると仮説を立て,口腔機能低下症とサルコペニアとの関連を明らかにすることを目的とした。

【方法】

来場型健診を受診した東京都在住の65歳以上の878名(男性268名,女性610名,平均年齢76.5±8.3歳)を対象者とした。口腔機能低下症の診断項目として,Tongue Coating Index(TCI),口腔粘膜湿潤度,咬合力,オーラルディアドコキネシス(ODK)/pa/,/ta/,/ka/,舌圧,咀嚼機能,嚥下機能を評価した。サルコペニアの診断項目として,握力,歩行速度,四肢骨格筋肉量を測定し,Asian Working Group for Sarcopenia 2019の診断基準に準じてサルコペニアを診断した。その他に,生活習慣,既往歴,社会心理学的状態等を調査した。サルコペニアの有無による口腔機能の差をMann-WhitneyのU検定とカイ二乗検定で,口腔機能低下症とサルコペニアとの関連をロジスティック回帰分析で検討した。

【結果と考察】

 対象者集団おける口腔機能低下症とサルコペニアの有病者率は,それぞれ50.5%(443名)と18.6%(163名)だった。口腔機能低下症の診断項目のうち,TCI,咬合力,ODK /pa/,/ta/,/ka/,舌圧,咀嚼機能,嚥下機能がサルコペニアの有無で有意差を認めた。また,サルコペニアを従属変数としたロジスティック回帰分析の結果,口腔機能低下症とサルコペニアとの間に有意な関連を認めた(オッズ比;1.57,95%信頼区間;1.01-2.43)。本研究により,口腔機能低下症はサルコペニアと関連することが明らかとなった。口腔機能低下症の罹患者に対しては,口腔健康管理に止まらず,医科歯科連携による包括的な対応が必要であると考えられる。

(COI開示:なし,東京都健康長寿医療センター研究部門倫理委員会承認:2018-16)