The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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口腔機能

[P一般-042] 包括的な認知機能評価に基づき診断された軽度認知機能障害患者における口腔機能低下症の実態調査

○鈴木 啓之1、古屋 純一2,3、松原 ちあき1、日髙 玲奈4、戸原 玄3、佐藤 裕二2、水口 俊介1 (1. 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野、2. 昭和大学歯学部 高齢者歯科学講座、3. 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野、4. 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 地域・福祉口腔機能管理学分野)

【目的】

 Mild cognitive impairments (MCI)患者はさまざまな口腔機能が低下していることが報告されている.しかしながら患者の認知機能を包括的に評価したうえで,MCIと診断された患者の口腔機能に関してはいまだ明らかにはなっていない.そこで我々は,認知症専門医による包括的な認知機能評価によりMCIと診断された患者における,口腔機能低下症の実態解明,さらにはMCIのリスク因子となる口腔機能を検討することを目的として横断研究を行った.

【方法】

 本研究対象者は,2017年12月から2020年1月までの間に,認知機能低下を主訴として認知症専門クリニックを受診した患者とその同伴者96名(平均年齢73.3±8.5歳)とした.本研究参加者の認知機能は,神経心理検査,画像検査,血液検査の結果から,認知症専門医が包括的に診断した.研究参加者基本情報として,年齢,性別,教育年数,飲酒,喫煙などを評価するとともに,口腔機能低下症の構成要素である口腔湿潤度,舌口唇運動機能(ODK/pa/,/ta/),舌圧,咬合力,咀嚼能力,嚥下能力を評価した.

【結果と考察】

 認知症専門医が本研究参加者の認知機能を包括的に評価した結果,健常者が48名(平均年齢69.8±8.8歳),MCIが48名(平均年齢76.9±6.7歳)であり,MCI群が健常群と比較して有意に高齢であった.口腔機能においては,最大咬合力が健常群と比較してMCI群が有意に低く,その他の口腔機能も有意な差は認めないもののMCI群が低い値を示した.また,口腔機能低下症診断基準から考えた場合,ODK/pa/が低下している者の割合がMCI群において有意に多かった.さらに,MCIの有無を目的変数としたロジスティック回帰分析の結果,認知機能低下には年齢および最大咬合力が有意な関連を示した.MCI患者の口腔機能は低下傾向にあり,咬合力低下が,認知機能低下への独立したリスク因子であったことから,咬合力低下をもたらす歯列欠損の拡大予防など適切な口腔機能管理を,定期的な歯科検診を通じて実施することは,様々なライフステージに関わる身近な医療機関としての歯科が担うべき重要な役割であり,MCI発症の予防・早期発見・早期治療にも寄与できる可能性が示唆された.

(COI 開示:なし)

(東京医科歯科大学医学部倫理審査委員会承認 M2017-112)