The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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連携医療・地域医療

[P一般-046] かかりつけ歯科としての対応が多職種連携を円滑にさせた歯肉癌の一例

○中村 弘之1 (1. ナカムラ歯科医院)

【目的】

 近年口腔がんは増加しているといわれる。口腔がんは歯科受診時に見つかる事も多く、在宅療養に移行するとかかりつけ歯科医として口腔管理を担うことが期待される。今回初診時に歯肉癌疑いで2次医療機関に紹介後ADL低下により5か月後に在宅療養となり、かかりつけ歯科医として看取りまでの2か月間を多職種連携の中心として関わった症例を経験したので報告する。

【症例の概要】

 87歳女性。変形性脊椎症、骨粗鬆症の既往あり。令和2年7月左下臼歯部に鈍痛を訴え当院受診。左下智歯周囲炎が疑われたが、潰瘍部膨隆所見の違和感から悪性腫瘍を疑い念のため二次医療機関であるK病院口腔外科に紹介した。その後K病院から三次医療機関のT病院口腔外科に精査目的で転院し扁平上皮癌(歯肉癌)頚部リンパ節転移と診断された。本人家族とも積極的加療を望まず、K病院口腔外科への通院により経口抗がん剤UFT投与と緩和ケアが管理されていた。令和2年12月痛みの訴えと口腔清掃が出来ない状況について介護支援専門員から当院に相談があり、5か月ぶりに居宅訪問にて再会した。在宅での口腔衛生管理が必要と判断したため、K病院口腔外科主治医に照会して当院による介入を開始した。令和3年1月悪液質によるADL低下及び顎下リンパ節の腫脹に伴って開口障害(1横指)及び腐敗臭を伴う排膿があり、疼痛管理も困難になった。さらにK病院への通院もマンパワー的に厳しとの相談があり、介護支援専門員に対して地域の訪問医師による全身管理への移行を提案した。その後当院と連携経験のある医師が訪問診療として加わり多職種によるチームに繋がった。看取りまで円滑な連携で対応する事ができた。


【結果と考察】
 歯肉癌は口腔がんの25%に及ぶといわれる。直視できることから歯科受診時に見つかる事が多い。早期に発見することは大切であるが、それ以上に予後の悪化や在宅療養でのQOL維持のための口腔管理に対応することが、かかりつけ歯科医院の責務として重要であると考える。これまで口腔がんと診断され病院で見取りとなるケースが多く終末期への対応は少なかったが、地域包括ケアシステムが進み、今後在宅での看取りは増加すると思われる。がんの終末期の急変や口腔環境の悪化は厳しいことから、終末期を見据えたかかりつけ歯科としてのスキルアップが必須で、そのためには経験と学びの共有が必要と思われた。

COI開示:なし