The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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地域歯科医療部門

[P一般-023] 地域歯科クリニックと病院とがシームレスに連携し、食支援を行った事例

○尾上 庸惠1、加藤 理子2、齋藤 貴之1 (1. ごはんがたべたい歯科クリニック、2. ねりま健育会病院)

【目的】地域包括ケアシステムを実現し、その方らしく在宅で暮らしていくには日常的な食事の問題の解決が求められる。そのためには病院と地域の診療機関が連携し、退院後の食事環境を見据えた一貫した食支援が求められているが、実現できていないのが現状である。今回、我々が入院中から情報共有を行い、在宅復帰後もシームレスに食支援を行うことによりADLの改善が出来た事例について報告する。
【症例の概要と処置】患者は84歳女性で脳梗塞により、X年Y月地域の中核病院(A病院)に入院した。後遺症として重度の嚥下障害があり、誤嚥性肺炎の肺炎を併発するなど在宅復帰が難しい状況であった。しかしながら本人及び家族の在宅復帰の要望が強いため、在宅復帰後も継続的な食支援を行うことを前提に我々の連携が始まった。
当院初診時の口腔内は上下無歯顎で総義歯を着用していた。身体的には体重減少とそれに伴う低栄養傾向がみられた。現疾患と低栄養により、口腔周囲筋ならびに舌機能の低下が確認され、嚥下時の舌接触の不良や食べこぼしなどが散見された。そのため訪問歯科が介入し、口腔リハビリテーションを行い、機能の改善を試みた。またVEによる嚥下評価を行い、状態にあわせて食形態をあげていった。これらの情報をケアマネジャーを中心にデイサービスやSTと共有し、継続的に口腔リハビリテーションを実施した。
【結果と考察】本事例においては入院時に情報共有を行い、お互いの役割を明確化した。入院時は必要栄養量を安全に摂取できる事を目的にゼリー、ペースト食の嚥下訓練を行い、経管栄養に頼らない形で在宅復帰できた。退院後は継続的な口腔リハビリテーションを行い、徐々に食形態をあげて栄養状態と共にADLを改善に取り組んだ。本事例においては入院中から在宅復帰後の食支援について検討できたため、長期的な視野にたった支援計画を立てる事ができた。今後も本事例のような連携を進めていくことでより患者の状態に合わせた食支援ができ、食形態のミスマッチングによる誤嚥性肺炎の発症を予防できると考えている。また経管栄養の使用の有無は家族の介護負担や介護サービスの利用の可否が大きく影響する。連携を深め、食事の問題が解決できれば従来、在宅復帰を強く望みながらもやむを得ず療養型病院に転院せざる負えなかった患者に在宅復帰の選択肢を提示できるのではないだろうか。