一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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地域歯科医療部門

[P一般-027] 訪問歯科診療によって急性期から在宅へと継続した食支援を行えた3症例

○正國 光一1、迫田 敏1、関本 愉3、荒井 昌海2、松尾 浩一郎3 (1. 医療法人さこだ歯科医院,鹿児島県、2. エムズ歯科クリニック,東京都、3. 藤田医科大学医学部歯科・口腔外科学講座)

【目的】

今回われわれは,訪問歯科診療によって,急性期病院入院中から退院後の在宅にかけて継続した摂食嚥下障害の評価と食支援を行い,食事形態の向上に繋げた3症例について報告する。

【症例の概要と処置】

症例1.99歳,男性。気胸,誤嚥性肺炎にてA病院に入院。入院19日目に病院スタッフとともに訪問歯科診療による嚥下内視鏡検査(VE)を実施した。評価後,全粥キザミトロミ食にて経口摂取が開始された。入院24日目にB病院に転院した。転院後には,義歯調整と口腔機能訓練を行い,転院22日目にVEにて再評価した。水分で不顕性誤嚥を認めたため,水分のトロミを強くするように指示し,経過をフォローしていった。症例2.88歳,女性。うっ血性心不全にて入院。入院29日目に訪問歯科診療にてVEを実施した。摂食嚥下機能は良好で,軟飯軟菜一口大で問題ないことを確認し,食事形態を全粥キザミトロミ食からアップした。入院70日目に自宅退院となり,退院後には,義歯調整と口腔機能訓練を実施した。ADLの改善が見られたため,退院後36日目にVE再評価し,常食摂取可能を確認し,家族と同じ食事を同じ食卓で摂取可能となった。症例3.73歳,男性。直腸穿孔,重度敗血症にて入院。入院66日目まで気管切開され静脈栄養管理されていた。入院66日目にVE実施し,重度嚥下障害と診断し,病院言語聴覚士によるゼリーの直接訓練を開始し,訪問歯科衛生士による間接訓練も実施した。入院中は継続したVEによる再評価を行い,段階的に食形態を上げ,入院128日目のVEでは,常食一口大まで摂取可能と診断され,退院された。退院後には電話にて食事状況を確認し,問題ないとのことで終診とした。

【結果と考察】

われわれは,歯科のない急性期病院に,訪問歯科診療という形で連携することで,急性期における摂食嚥下障害の評価から,入院中の多職種連携による介入および退院後の在宅での食支援,とシームレスな介入を行えた。歯科のない急性期病院は多く存在し,地方では,摂食嚥下障害の画像検査が行える病院も限られている状況にある。入院中から退院後にかけて継続的な介入が可能な訪問歯科診療の特性を活かして,急性期からの医科歯科連携と継続的な介入を行い,患者の摂食嚥下機能の改善と食事形態の向上に繋がったと考える。