The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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地域歯科医療部門

[P一般-030] 抗精神病薬や抗うつ薬を内服している患者に対する局所麻酔が循環動態に与える影響

○大内 謙太郎1、上野 陽子1、鈴木 宏樹1、陣内 暁夫1 (1. 医療法人井上会 篠栗病院 歯科)

【目的】

 抗精神病薬や抗うつ薬が、アドレナリンとの相互作用によって血圧上昇や低下を招くことが知られている。今回、抗精神病薬や抗うつ薬を内服している患者の局所麻酔前後の循環動態変動を検討した。


【方法】

 篠栗病院倫理委員会の承認を得て実施した(No. 15)。2017年7月から2020年7月までにアドレナリン含有リドカインを使用した局所麻酔下で歯科処置を行った患者のうち、抗精神病薬や抗うつ薬の内服患者を対象とした。
 局所麻酔前に血圧を測定し(T1)、次いで局所麻酔を行った。含嗽後、直ちに血圧を測定した(T2)。
 局所麻酔前後の血圧値から変動を算出し(( T2の数値- T1の数値) / T1の数値(%))、血圧の変動(ΔSBP、ΔDBP)を目的変数として、年齢、局所麻酔薬投与量、内服抗精神病薬、内服抗うつ薬、T1の収縮期血圧(T1SBP)、T1の拡張期血圧(T1DBP)を説明変数として多変量解析した。



【結果と考察】

[結果]
 抗精神病薬や抗うつ薬を内服している患者は136名(年齢72.9±11.4歳)であり、その中で、抗精神病薬内服患者は94名、抗うつ薬内服患者は56名であった。T1SBPは129 mmHg、T2SBP(T2の収縮期血圧)は126 mmHgで、差を認めた(P=0.0022)。T1DBPは79 mmHg、T2DBP(T2の拡張期血圧)は77 mmHgで、差を認めた(P=0.0036)。
 多変量解析の結果、ΔSBPにはT1SBPと非定型抗精神病薬MARTAが、ΔDBPには年齢とT1DBPが関連していた(P<0.05)。

[考察]
 ブチロフェノン系やフェノチアジン系等の定型抗精神病薬が局所麻酔薬のβ作用を優位に発現させて血圧低下を修飾することや、三環系抗うつ薬がアドレナリン再取り込み阻害によってα作用を増強させて血圧上昇することが知られている。本研究では、定型抗精神病薬や抗うつ薬は局所麻酔前後の血圧変動に影響を与えなかったが、非定型抗精神病薬MARTAが影響を与えた。MARTAは多元受容体作用抗精神病薬とよばれ、D2受容体拮抗作用、5-HT2受容体拮抗作用をあらわす他、アドレナリンα1受容体やヒスタミンH1受容体などにも作用することが知られており、α1受容体に対する作用が、局所麻酔前後の血圧変動に影響を与えたと考えられた。

(COI開示:なし)