The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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地域歯科医療部門

[P一般-031] 収縮期圧58mmHgの低血圧患者に対し、2次医療機関で全身管理下に歯科治療を行った2症例

○間宮 秀樹1、堀本 進1、高橋 恭彦1、菊地 幸信1、平野 昌保1、平山 勝徳1、秋本 覚1、小林 利也1、和田 光利1、片山 正昭1 (1. 藤沢市歯科医師会)

【目的】
 一般に収縮期圧100mmHg以下は低血圧症とされ,特に60mmHg以下への急激な下降はショック状態とされている。今回我々は,藤沢市歯科医師会南部高齢者診療所で収縮期圧58mmHgの著しい低血圧を呈した患者に対する歯科治療を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
症例1 87歳男性。「入れ歯が合わない」との主訴で来院。基礎疾患に認知症,脊柱管狭窄があったが循環作動薬の内服はなかった。初診時血圧は79/52mmHg,心拍数69回/分であったが気分不快はなかった。全14回の治療内容は義歯関連13回,歯石除去術1回であった。各来院後,最初に測定した収縮期圧の平均は93.2±16.3mmHgで最低値は63mmHg,各治療中の最も低い収縮期圧の平均は76.7±11.2mmHgで,最低値は58mmHgであったが気分不快等はなかった。治療椅子上で背板操作を行う際には可及的に時間をかけて行い,移動時にはスタッフが介助した。血圧低下に伴う合併症を認めなかったため昇圧治療は行わなかった。
症例2 75歳女性。「前歯に物が当たると痛い」との主訴で来院。基礎疾患に狭心症,心不全既往があり,Ca拮抗薬,β遮断薬,アンギオテンシン変換酵素阻害薬等を内服していた。対診では,基礎疾患のため内服薬継続は必要で低血圧はやむを得ないとの返事であった。初診時の血圧は70/49mmHg,心拍数は68回/分であったが気分不快はなかった。全22回の治療において,来院後に最初に測定した収縮期圧の平均は78.5±11.7mmHgで最低値は58mmHgであったが,気分不快やふらつきはなかった。治療内容は根管治療が最も多かった。治療中に最も低かった収縮期圧の平均は74.2±13.9mmHgで,最低値は58 mmHgであったが,気分不快等はみられず,昇圧薬投与は行わなかった。治療時の背板操作には時間をかけ,歩行時には介助した。
【結果と考察】
収縮期圧50mmHg台は脳や心臓など重要臓器の血流低下の危険が高い。今回,血圧低下が慢性的であったため脳や心臓のautoregulationが左方移動しており,自覚症状がなかったと考えられた。しかし予備力が少ないため虚血のリスクは高く,昇圧薬投与を含めた準備は必須と考えられた。今回、治療椅子上での体位変換時の配慮と移動時の転倒防止の配慮が有効であったと考えられた。