The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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一般部門

[P一般-008] とろみ付き炭酸飲料が嚥下障害患者の嚥下機能に及ぼす効果について

○齋木 章乃1、吉見 佳那子1、中川 量晴1、長澤 祐季1、吉澤 彰1、山田 大志1、有瀧 航太1、中根 綾子1、山口 浩平1、前田 圭介2、戸原 玄1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医歯学専攻老化制御学講座摂食嚥下リハビリテーション学分野、2. 国立長寿医療研究センター老年内科部)

【目的】
 炭酸飲料は,水分と比較し少量で嚥下反射を惹起させ,かつ嚥下反射惹起までの時間を短縮させることが報告されている。嚥下障害患者は誤嚥防止のため,液体にとろみを付与し摂取することが多いが,これまでに炭酸飲料にとろみを付与し摂取させた研究は報告されていない。本研究では,嚥下障害患者を対象としてとろみ付き炭酸飲料(以下炭酸とろみ水)と通常のとろみ水摂取時における嚥下内視鏡検査を行い,炭酸の有無が嚥下機能に与える効果を検証することを目的とした。
【方法】
 対象は当分野の外来および訪問診療を受診した,嚥下障害または嚥下障害疑いの患者6名である。炭酸とろみ水は,市販のペットボトル炭酸飲料500mlに学会基準中間とろみ規定量のとろみ調整食品を混和し,一晩冷蔵保存した。炭酸が入っていない飲料水にも同様に中間のとろみを付与した。本研究はクロスオーバー試験で行い,先に炭酸とろみ水を摂取する群と,先にとろみ水を摂取する群の2群にランダムに振り分けた。嚥下内視鏡挿入下で試料を5cc摂取させた際の摂取状況を評価した。VE画像から,Penetration Aspiration Scale(PAS),The Yale Pharyngeal Residue Severity Rating Scaleを用いて誤嚥,喉頭侵入,咽頭残留を評価し,嚥下反射惹起部位は嚥下反射が惹起される食塊先端の位置を5部位に分類し評価した。それぞれの評価項目をカテゴリカル変数に変換し,2群間で相違があるかカイ2乗検定で統計学的に比較した。
【結果と考察】
 炭酸とろみ水のPAS,喉頭蓋谷および梨状窩の残留,嚥下反射惹起部位の中央値(最小値-最大値)はそれぞれ,1(1-1),3(2-4),2.5(2-4),1.5(1-2)で,とろみ水はそれぞれ,1(1-3),3(2-5),3(2-4),2(1-3)であり,いずれの項目も統計学的な有意差を認めなかった。本研究より,炭酸とろみ水はとろみ水と同様に安全に摂取することが可能であることが示された。炭酸の咽頭残留量減少と嚥下反射惹起までの時間を短縮させる効果については,対象者を増やして検討を続ける予定である。
(COI開示:なし)
(東京医科歯科大学歯学部倫理委員会承認番号 D2020-047)