The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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一般部門

[P一般-016] とろみ調整食品が栄養吸収に影響を及ぼす可能性―ラットの発育を観察した基礎的研究―

○長澤 祐季1、中川 量晴1、吉見 佳那子1、吉澤 彰1、玉井 斗萌1、山口 浩平1、中根 綾子1、戸原 玄1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【目的】経口摂取や服薬が困難な高齢者は、とろみ調整食品を用いることがある。とろみ調整食品の主成分であるキサンタンガムに関する先行研究では、健常者にキサンタンガムを添加した濃厚流動食を摂取させると、添加していない場合と比較して摂取後120分時点の血糖値が有意に抑制された。しかしながら、とろみ調整食品の長期間の摂取が栄養吸収に及ぼす影響については、これまで報告されていない。そこで、ラットの発育と飼料形態の関連性を検証するために、基礎的研究を実施した。

【方法】4週齢雄性SDラットを5匹ずつ4群に分け、液体飼料(C社製)、0.5,1,1.5%とろみ調整飼料(液体飼料にとろみ剤・N社製を添加)を用いて、3週間飼育した(A群:液体飼料、B群:0.5%とろみ飼料、C群:1%とろみ飼料、D群:1.5%とろみ飼料)。餌は100kcal/日に揃えてすべて経口摂取させ、水は自由摂取とした。液体飼料ととろみ調整飼料の摂取開始翌日をx日として体重を経時的に測定し、体重増加割合(%)を用いて飼育期間中の発育状況の変化を評価した。実験終了時(x+24日目)に解剖し肝,腎,精巣上体脂肪重量の測定と血液生化学的検査を行い、体重増加割合(%)とともに4群間の相違の有無を統計学的に検討した。

【結果】x+7,x+14,x+19日目においてD群の体重増加率はA群と比較し有意に低値を示した。また、x+14日目においてC群の体重増加率はA群と比較し有意に低値であった。

腎臓重量はA群と比較しD群で有意に低値であった。肝臓、精巣上体脂肪重量に差を認めなかった。血液生化学検査では、A群と比較して血中TG(mg/dL)はC群で、GLU (mg/dL)はC,D群で有意に低値を示した。

【考察および結論】

液体飼料と比較してとろみ調整飼料は、ラットの体重と腎臓重量の増加を制限する可能性があり、血中TGやGLU濃度を低下させることが明らかになった。また、とろみ剤の添加量に依存して血中GLU濃度は低下した。とろみ調整食品の長期的な摂取は栄養吸収に影響を及ぼす可能性がある。経口摂取や服薬が困難な高齢者に対するとろみ調整食品の使用にあたっては、適量を適切な期間使用するために定期的な嚥下機能評価が必要であろう。

(東京医科歯科大学動物実験委員会の承認A2019-270A)