The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

[摂食P-14] サルコペニアによる嚥下障害患者に対する多職種連携の一例

○中山 渕利1 (1. 日本大学歯学部摂食機能療法学講座)

【目的】
サルコペニアによって嚥下機能が低下することが知られており、その回復には嚥下関連筋の筋力トレーニングに加えて、栄養状態の改善が必要となる。今回、サルコペニアによる嚥下障害によって経口摂取が困難だった患者に対し、医師、歯科医師、歯科衛生士、看護師(以下、Ns)、管理栄養士、言語聴覚士(以下、ST)の多職種連携によって経口摂取できるまでに回復した1例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
78歳女性、腰椎圧迫骨折と誤嚥性肺炎後の廃用症候群により入院。入院時は中心静脈栄養管理でBody Mass Index(以下、BMI)は11.4 kg/m2、握力は5.3kg、Skeletal Muscle mass Index(以下、SMI)は2.9kg/m2であった。初回の嚥下造影検査(以下、VF)では、90度座位で3ccのトロミ水を嚥下した際に多量の咽頭残留と誤嚥を認めたが、50度リクライニング位でティースプーン1/3のゼリーなら誤嚥は認めなかった。検査結果を管理栄養士、ST、Nsと協議し、まずは栄養改善のために中心静脈栄養から静注用脂肪乳剤の注入を医師に検討してもらい、STに舌骨上下筋群に対する間接訓練およびゼリーの直接訓練を行ってもらうことにした。また、歯科では2週に1回のVFを行い、その検査結果を踏まえて訓練内容および栄養方法について見直しを行った。
【結果と考察】
栄養状態および骨格筋量の改善と共に嚥下機能の改善を認め、介入開始から約6週後に経口のみで栄養摂取できるようになり、約10週後に軟飯、軟菜食の摂取が可能となって老健へ退院した。退院時のBMIは14.5 kg/m2、握力は12.8kg、SMIは3.8 kg/m2であった。本症例では、毎回VF時に管理栄養士、ST、Nsに立ち会ってもらうことで必要な情報を共有でき、他職種の意見を取り入れながら訓練内容や栄養方法の見直しを行えたことが、経口摂取の再開につながったと考えられる。サルコペニアによる嚥下障害患者に対して、多職種連携が有効性が再認識できた。

COI開示:なし